社説

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 尼崎JR脱線事故から、きょうで16年になる。乗客106人と運転士が死亡し、493人が重軽傷(神戸地検調べ)を負った。遺族や負傷者のつらい思いは年月を経ても消えるものではない。JR西日本は安全への誓いを新たにしてもらいたい。

 昨年、新型コロナウイルスの感染拡大で追悼慰霊式ができなかった。今年は行う予定だったが、変異株の急拡大で開くことができなくなった。事故現場の追悼施設「祈りの杜(もり)」に献花台などは設けられる。安全への意識を共有する機会でもあり、中止は残念でならない。

 コロナ禍は同社の経営にも影を落とす。利用者の減少などにより業績が悪化し、2021年3月期の連結純損益は2400億円の赤字を見込んでいる。

 同社は手当の減額、役員報酬カット、社員の一時帰休や出向などの経費削減策を続ける。だが感染収束は見通せず、経営環境が改善する気配はない。

 遺族や利用者が懸念するのは、経費削減が安全対策に影響しないかということだ。

 昨年10月に発表した23年3月期までの中期経営計画の見直しによると、5年間の安全投資が5300億円から5千億円に減額される。ホーム柵の設置計画や自動列車停止装置(ATS)の更新は維持するという。

 事故の教訓を重く受け止め、安全につながる投資は常に最優先であることを、組織全体で改めて確認すべきだ。

 記憶と教訓の継承も大きな課題だ。同社が今年3月に公表した指針では、「何よりも安全を優先する判断や行動の実践」など8項目の視点で、社員教育を見直すとしている。事故後に入社した社員が半数を超えているだけに、その教育を徹底し、検証を重ねることを望みたい。

 24年に社員研修センター(大阪府吹田市)に完成する施設では、事故車両が保存される予定だ。惨事を伝える重要な存在になるだろう。ただ、保存場所や公開方法では遺族の中でも意見が分かれる。それぞれの声に真摯(しんし)に耳を傾けてほしい。

 同社の安全憲章には「(安全は)不断の努力によって築きあげられる」とある。その努力はコロナ禍の中であっても継続しなければならない。

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