社説

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 菅義偉首相の看板政策である「デジタル改革関連法案」が衆院を通過し、参院で審議されている。個人情報の取り扱いなど多くの懸念が残されており、より丁寧な説明と慎重な議論を求めたい。

 関連法案は、9月にデジタル庁を発足させる設置法案をはじめ、個人情報保護法の見直し、マイナンバーと預貯金口座の連携、押印手続きの廃止など約60本の法案を束ねる。

 新型コロナウイルス禍で、行政サービスのデジタル化の遅れが露呈した。一律10万円の特別定額給付金や雇用調整助成金のオンライン申請でトラブルが相次ぎ、厚生労働省の接触確認アプリ「COCOA(ココア)」の不具合が長期間放置されていたことも記憶に新しい。

 デジタル化の推進は喫緊の課題だが、法案の参考資料に45カ所も誤りが見つかるなど粗さが目立つ。衆院通過に際し、28項目にわたる付帯決議を採択したのも、審議が不十分だったことの表れではないのか。

 個人情報保護法改正案は、国や自治体、企業で異なる保護ルールを一元化することが柱だ。政府は感染症や災害対策などに生かせると利点を強調するが、国による個人データの集約には国民の監視・統制につながる危険がつきまとう。情報が漏えいした場合の影響も計り知れない。

 個人情報保護は自治体が国に先行して取り組んできた。特に思想信条、病歴など「要配慮個人情報」については、9割以上の自治体が収集や記録を条例などで規制する。多くは収集自体を原則禁止にしている。

 法が成立すれば、自治体が独自の保護策を上乗せする場合、国への届け出が必要となる。規制が緩い国の基準に一本化することでプライバシー保護を後退させてはならない。

 行政機関に「相当の理由」があれば、本人の同意がなくても個人情報を本来の目的以外に利用し、第三者に提供できる規定もある。

 個人情報保護委員会は行政機関に助言や勧告はできても、是正命令を出す権限はない。付帯決議に保護委による監視などを盛り込んだが、法的拘束力はない。目的外利用の歯止めとしては不十分である。情報がどう扱われているかを知り、訂正や抹消を要求できる「自己情報コントロール権」の保障も明記すべきだ。

 デジタルに苦手意識を持つ人は高齢者ばかりではない。デジタル化による不公平感が生じないよう、分かりやすく、安心して利活用できる仕組みづくりも求められる。

 国民のプライバシーや生活に関わる重要な改革である。政府、与党は国民の不安や疑問を置き去りにしたまま、数の力で押し切るようなことがあってはならない。

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