社説

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 8年ぶりの選挙戦となった先月の豊岡市長選は、4期務めた現職の中貝宗治氏が接戦の末に敗れ、波紋を広げた。

 新市長に就任した関貫久仁郎(かんぬきくにお)氏は元市議だが、知名度では不利とみられた。市長交代は、長期に及んだ前市政への不満や批判の表れとみるべきだろう。

 コウノトリの野生復帰や「演劇のまちづくり」など独自の取り組みは注目を集めてきた。

 ただ、合併前の旧市町間の格差解消や子育て支援、医療・福祉充実など、多くの人が求めるものと乖離(かいり)があったようだ。

 自治体が担うべき責務とは何か。地域の現状と未来について改めて考える契機としたい。

 中貝氏は、合併前の最後の市長選を含め過去5回の選挙を経てきた。だが選挙戦は合併前の初当選と合併後3期目の改選時だけで、舌戦を通して政策を訴える機会は多くはなかった。

 「私の見えていたもの、見えていなかったものがあった」。選挙後の中貝氏の言葉には、苦渋の思いがにじむ。

 身近な市民ニーズに応えてこそ、大きな「夢」を語る市長への信任は増す。姿勢のどこかにおごりや緩みはなかったか。

 一方、新市長の関貫氏は中貝氏が進めた演劇のまちづくりの見直しを掲げる。この選挙で、「なぜ豊岡で演劇なのか」と首をかしげる市民が少なくないことが浮き彫りになった。

 だが劇作家の平田オリザ氏や劇団員らが移り住み、芸術文化観光専門職大学も開校して新入生が入学したばかりである。

 むしろ他都市にない文化資源を生かし、市民との連携を深める努力をするべきだ。学長に就任した平田氏とも、市長自らひざを交えて対話してほしい。

 選挙中に述べたジェンダーギャップ(男女格差)解消の見直しにも、慎重さが求められる。「行政の後退」と映っては市にとってマイナスでしかない。

 コロナ禍の今、多くの市民や事業者が支援を求めている。関貫氏への支持は、子どもの医療無料化など、近隣自治体が先行する政策の実現に市民が期待を寄せた結果とも言える。

 人口減少と若年層流出が続く中で持続可能な地域の将来をどう描くか。新市長は総合的なビジョンを示さねばならない。

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