社説

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 高齢者が入所する施設で新型コロナウイルスのクラスター(感染者集団)が相次いでいる。医療体制が危機的状況にある兵庫県や大阪府で、入院先が見つからず、施設内で死亡する事例も増えている。国や自治体は対応を施設任せにせず、応援スタッフの確保などの支援態勢づくりを急いでほしい。

 この1カ月の間に、神戸市長田区の介護老人保健施設では当時の入所者の2割近い26人が死亡し、宝塚市の老健施設でも入所者8人が命を落とした。大阪府門真市では有料老人ホームの入所者13人が亡くなった。多くは施設内で適切な治療を受けられないまま息を引き取っている。

 流行の「第1波」以来、高齢者施設での集団感染は全国各地で続いている。認知症患者の場合、マスクの着用やフロアの区域分けなどの対策の徹底は難しい。このため、感染者の早期発見へPCRなど検査の拡充と、早期治療につながる医療体制確保の重要性が指摘されてきた。

 しかし「第4波」の今も、対策は十分とは言い難い。猛威をふるう変異株は感染力も強く、共同生活を送る施設の職員の感染リスクも高くならざるを得ない。入所者や施設をさらなる危険にさらしている。

 問題の本質は、入院すべき患者が入院できない医療の逼迫(ひっぱく)にある。

 神戸市がきのう公表した病床使用率は90%を超え、入院率は10%台前半に低迷している。病床が圧倒的に不足し、保健所は「命の選別」とも言える過酷な調整を迫られている。

 兵庫県全体の病床使用率も70%台と高止まりし、入院・宿泊療養の待機者は1500人近くに上る。施設以外でも、自宅で亡くなる人が日増しに増えている。

 この状況が改善しなければ、国民の命を守ることはおぼつかない。

 医療の逼迫地域では、自治体や施設、医師会、地域の診療所などが連携し、入院できない人へのケアの充実や、クラスターが発生した際に早期に対応できる態勢をつくることが待ったなしだ。施設の入所者と職員のワクチン接種を急ぐのは言うまでもない。

 開業医による施設への訪問診療や、回復期にある人の転院先の確保を進めることも重要である。そうした取り組みを人材や財政面で支えるのは国や自治体の役割だ。感染拡大の防止とケア提供の継続を両立させていく必要がある。

 1人でも感染者が減るよう、私たちも行動変容を徹底したい。国や自治体、医療界、経済界、そして市民が総力を結集し、助かる命を救うための態勢を立て直さなければならない。

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