社説

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 経団連の会長に、住友化学会長の十倉(とくら)雅和氏=兵庫県西脇市出身=が6月1日付で就任する。

 現会長で日立製作所相談役の中西宏明氏は、リンパ腫の治療に専念するため1年以上の任期を残して辞任を申し出た。トップの途中交代は、旧経団連と日経連が統合した2002年以来初めてとなる。

 記者会見で十倉氏は「(企業は)今まで利益を優先してきたきらいがあるが、そのことが生態系の破壊を招き、格差を生んだ。サステナブル(持続可能)な資本主義を目指したい」と語った。その方向性に異論はない。問われているのは実行力だ。

 気候変動の影響は深刻さを増している。急速なグローバル化は感染症の世界的大流行を引き起こし、貧富の差を一層浮き彫りにした。世界中で大企業の社会的責任を問う声が高まっている現状がある。

 持続可能な社会の実現に向け、経済界はその責任を果たさねばならない。今こそ脱炭素や格差是正に本腰を入れるべきだ。

 経団連には大企業を中心に1400社以上が加盟する。十倉新会長は旗振り役として強力なリーダーシップを発揮してもらいたい。

 喫緊の課題は、新型コロナウイルスの感染防止と経済活動の両立だ。加えてコロナ後を見据えた産業界の底上げ、雇用の安定などに取り組む必要がある。デジタル技術による変革「DX(デジタルトランスフォーメーション)」の進展も鍵になる。

 足元では経団連の組織改革が待ったなしである。女性の役員登用を進め、多様な人材を集めることで政策提言能力を高める必要がある。

 18年に就任した中西氏が最初に手がけたのは、学生の面接解禁日などを決める「就活ルール」の廃止だった。国際競争力を高めるには、終身雇用や年功序列といった日本型雇用慣行の見直しが必要と訴えた。通年採用の拡大を促したが、唐突な発言が混乱を招いた経緯がある。

 エネルギー政策については「(原発の)再稼働をどんどんやるべき」などと表明して物議を醸し、原発の積極的な新増設を政府に提言した。国民的な議論の必要性に触れながらも、結果的には一方的に主張を述べただけになった感は否めない。

 十倉氏は中西氏の路線を引き継ぐとし「社会から支持される経団連を目指す」と述べたが、独自色にも期待したい。米中対立などの難題が控えているからこそ議論を恐れず、政治にものを申す姿勢が重要だ。政権に追従するだけと映れば世論の支持は得られない。

 生まれ育った西脇への思いは深いと聞く。東京一極集中がもたらす地方の疲弊にも目を向けてほしい。

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