社説

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 イスラエルとパレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスで繰り広げられた武力衝突の停戦が、ようやく発効した。隣国エジプトの仲介を双方が受け入れた。ひとまず安堵(あんど)したい。

 11日間の武力衝突でハマスが放ったロケット弾は4300発に上る。一方、イスラエルは連日、市街地への空爆を続けた。一般市民らの犠牲はイスラエル側で10人超、ガザ地区では約250人に上る。

 痛ましいのは、ガザの死者の4分の1を子どもが占めていることだ。約1万7千棟の住宅が損壊し、うち約千棟が全壊した。7万人以上が住まいを失う事態となっている。

 停戦合意は過去、何度も破られてきた。今度こそ無益な破壊と流血に終止符を打たねばならない。

 そもそもの対立の始まりは、70年以上も前のイスラエル建国にさかのぼる。アラブ系のパレスチナ人が難民となり、周辺国も巻き込んで武力紛争が繰り返されてきた。

 今回の衝突は、双方が「聖地」とする東エルサレムでの対立が発端だ。イスラム教のラマダン(断食月)が始まった4月以降、イスラエル当局とパレスチナ住民の衝突が続き、多くの負傷者が出る状況だった。

 さらに警官隊がイスラム教礼拝所に突入して混乱が拡大し、ハマスによる攻撃が始まった。イスラエルの裁判所がパレスチナ人居住区の住民に立ち退きを命じた措置も、反イスラエル感情に火を付けたようだ。

 双方とも「報復」と「自衛措置」を主張し、武力行使を正当化する。看過できないのは、巻き込まれた市民の被害が甚大なことである。

 既に国民の6割が新型コロナウイルスの1回目のワクチンを接種したイスラエルと対照的に、ガザではワクチンが十分に確保されていない。PCR検査を行っていた診療所が空爆で破壊され、避難所は密状態という。都市機能がまひした中で感染拡大が懸念される危機的状況だ。

 さらに米国の通信社や中東の衛星テレビなどが入るビルも空爆の標的となり、「メディアへの意図的な攻撃」との疑念が持たれている。

 イスラエルの軍事行動がエスカレートした要因として、強硬姿勢を容認してきたトランプ前米大統領の姿勢は無視できない。人権重視と国際協調を掲げるバイデン大統領も厳しい姿勢を示せず、ウイグル族への人権侵害などが問題視される中国から逆に批判されている。これでは超大国の影響力は行使できないだろう。

 紛争の火種は残る。急がれるのは国際社会による復興、人道支援だ。中東に深く関与してきた米国は、国連などと連携して、地域の安定と和平の実現に尽力する責務がある。

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