社説

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 総務省の第三者委員会は、放送事業会社「東北新社」の外資規制違反問題に関する報告書を公表した。同社による幹部への度重なる接待との関連は確認できなかったとしつつ、違反を黙認したのは「行政をゆがめたとの指摘は免れない」と断じた。

 国民の行政に対する信頼を失墜させた責任は重い。総務省は、許認可の在り方を含めた行政手続きの見直しと再発防止を図らねばならない。

 調査の最大の焦点は、外資規制違反の報告を、総務省が受けていたかどうかだった。

 東北新社は2017年8月、外資規制に違反していることに気付き、当時の情報流通行政局の担当課長に報告したと主張している。これに対し、総務省は「報告された記憶はない」と否定し、食い違っていた。

 報告書は、当時の担当課長らが、外資規制違反の事実を認識していながら衛星放送事業の認定を取り消さず、子会社への承継方針を追認した可能性が高いと結論付けた。

 当時の課長らは依然否定しているが、同社から繰り返し接待を受け、プロ野球の観戦チケットも受け取っていた。規制違反を巡り、両者の間でどんなやりとりがあったのか。国会での虚偽答弁の可能性も疑われ、さらなる検証が必要だ。

 任意調査の限界もある。第三者委の聞き取りに、多くの職員が「覚えていない」との発言を繰り返したという。国民の疑念に答えたとは到底言えない。公正性に疑いを抱かれた以上、説明を尽くすべきである。

 東北新社が5月下旬に公表した報告書によると、接待の回数は20年12月までの約5年間に計54件に上る。その多くに、同社部長だった菅義偉首相の長男正剛(せいごう)氏が同席していた。

 武田良太総務相は「一個人の影響力が行政に発揮されたという事実は確認されていない」と述べたが、幹部らが違法と知りながら会食に応じていたのは、総務省に強い影響力を持つ首相への忖度(そんたく)ではないのか。疑念は拭えない。首相の「長男とは別人格だ」とする説明にも、国民の多くは納得していない。

 総務省は報告書の公表に合わせ、国家公務員倫理規程に違反する疑いのある会食が78件あり、職員32人を減給などの処分にしたと発表した。大半に同社とNTTグループが関係しており、2月の発表分と合わせると違法接待は100件を超える。

 放送や情報通信など巨大な権限を握る許認可官庁と、すり寄る事業者の癒着ぶりは異様である。官僚のモラルの低さにもあきれるほかない。

 国会は、総務省や事業者、第三者委の関係者を招致し、真相を徹底究明すべきだ。これで幕引きにしてはならない。

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