社説

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 通常国会はきのう、会期末を迎えた。感染が依然収束しない新型コロナウイルスへの対応や東京五輪・パラリンピック開催の判断、「政治とカネ」など、議論すべき課題、真相を究明すべき問題は山積する。国会の審議を打ち切り、政治的な空白をつくるのは責任放棄に等しい。

 野党は3カ月間の大幅延長を求めたが、政府、与党は応じなかった。国民には我慢を強いながら、丁寧な説明をせず、議論を避ける。政府の独断に歯止めをかけるのは、衆参、与野党を問わず国会議員の重要な役割であるはずだ。

 秋までには衆院選がある。審判を前に、全ての議員に自らの存在意義を問いたい。

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 10都道府県に発令中の緊急事態宣言は20日に期限となる。政府は新規感染者数が減少傾向にあるなどとして解除を検討し、兵庫県は大阪府などとともに、まん延防止等重点措置への移行を要請することを決めた。

 ただ、感染力の強いインド株の広がりが懸念されている。第5波を防ぐためにも、慎重な判断が必要だ。

 コロナ禍の1年余り、政府は危機管理能力の欠如を露呈してきた。緊急事態宣言を早々に解除しては、感染再拡大を招き、3度目の宣言につながった。

 未曽有の事態に国会も十分役割を果たしたとは言い難い。主な理由は国会の論戦に消極的な政府の姿勢にある。昨年の通常国会、臨時国会でも野党の会期延長の要求を拒んだ。その間、「Go To」事業などを進める一方で、補正予算の成立が遅れるなどで事業者への支援策が滞ったことは忘れてはならない。

 休業要請や時短要請の影響は一層深刻さを増している。菅義偉首相が頼みとするワクチン接種は加速したが、取り残される人がいないかどうかにも目配りする必要がある。国会による監視が欠かせない。

問われる五輪の安全

 五輪開催の是非を巡っても、首相は「国民の命と健康を守れなくなったら開かない」と繰り返すが、具体的な判断基準は示していない。党首討論の場でも質問に正面から答えない「逃げの姿勢」が目立った。

 五輪開催で人の流れが増え、感染拡大の危険性が高まるとの専門家の指摘がある。政府のコロナ対策分科会の尾身茂会長は、五輪に伴うリスクやその低減策について「選択肢を示すのが責務」として、関係者への提言を行う考えだ。

 観客の有無や上限について結論を出すべき時に来ている。選手や大会関係者の行動管理、多くの人が集まる関連イベントの可否など詰めなければならない課題は多い。五輪が医療を逼迫(ひっぱく)させる恐れはないのか。政府は国民に対し、納得できる十分な根拠を説明する責任がある。

 不測の事態に迅速に対応するには、議論の場を確保しておかねばならない。憲法53条の規定に基づき、野党から臨時国会召集の要求があれば首相は速やかに応じるべきだ。

言論の府に緊張感を

 菅政権が最重視するデジタル改革関連法や憲法改正の手続きを定める改正国民投票法、75歳以上の医療費負担を引き上げる医療制度改革関連法、安全保障関連施設周辺の土地利用規制法など、与党が重要と位置付ける法案はほぼ成立をみた。

 一方、外国人の送還や収容のルールを見直す入管難民法改正案は世論の反発で成立を断念した。LGBTなど性的少数者への理解を深める法案は超党派での合意に至りながら、自民党内の反対で提出が見送られた。政権の人権感覚が疑われる。

 深刻なのが「政治とカネ」の問題である。今国会中、参院選広島選挙区の大型買収事件で有罪が確定した河井案里元議員ら4人が、この問題で議員辞職した。いずれも国会で説明しておらず、首相はじめ党幹部も説明責任を果たさぬままだ。

 首相の長男が勤める放送事業会社「東北新社」やNTTが総務省幹部に違法接待を繰り返していた問題は、行政の公正性に対する信頼を大きく損ねた。国会を閉じて、一連の問題の追及から逃れようというのであれば、姑息(こそく)と言うほかない。

 野党は2年ぶりに内閣不信任決議案を出し退陣を迫ったが、腰が引けていた印象は否めない。

 安倍前政権に始まる国会軽視、論戦回避の体質は顕著になった。与野党の十分な政策論議がないまま迎える次期衆院選では、「言論の府」の機能を低下させてきた前政権以来の「1強政治」の是非が問われる。国会審議に緊張感を取り戻すためにも有権者の厳しい審判が必要である。

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