社説

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 企業統治の強化へ向けた日本の取り組みは「かけ声倒れ」だった-。国内外の投資家から、そう判断されかねない危機的な事態である。

 昨年7月に開かれた東芝の定時株主総会の運営について調べていた外部弁護士による調査報告書は、社会に衝撃を与えた。

 海外の「物言う株主」が経営陣に都合の悪い提案などをしないよう、経済産業省と一体になって不当に圧力をかけたというのだ。株主総会は公正に運営されたものとはいえないと結論づけた。

 東芝は「企業統治や法令順守の意識が欠如していた」と不公正を事実上認めた。今後改めて調査するという。今月25日の定時株主総会を前に、急きょ社外取締役と執行役4人の更迭を決めたが、不祥事を繰り返してきた企業体質を改善できるかは不透明だ。総会の波乱も予想される。

 一方、経産省は調査報告書の内容に疑義があるとしながら「調査する必要はない」と幕引きを図ろうとしている。あきれるほかない。

 原発や半導体、軍事品を手がける東芝は、安全保障上重要な企業として外資の出資を規制する改正外為法の適用対象となっている。梶山弘志経産相はそれを引き合いに、政府が東芝に一定程度関与するのは「当然のこと」と主張した。

 しかし調査報告書は、経産省と東芝が外為法に基づく取り締まりの可能性をちらつかせて株主の議決権行使を抑え込もうとした-と指摘している。事実なら、技術や情報の流出などを防ぐ外為法の趣旨を逸脱していると言わざるを得ない。

 経産省は金融庁などと共に企業統治強化の旗を振ってきた。それだけに日本の資本市場に対する信頼性を自ら損なった責任は重大だ。調査と説明を尽くさねばならない。

 昨年の東芝の株主総会では、旧村上ファンド系のエフィッシモ・キャピタル・マネージメントなど一部の大株主が、取締役の人事案を巡って経営陣と対立した。経営側の提案は通ったものの、今年3月の臨時株主総会でエフィッシモが求めた外部弁護士による調査が決まるなど異例の経緯をたどった。

 経営危機に陥った東芝が2017年に増資した際、引き受けたのがエフィッシモなどの物言う株主だった。なぜ東芝は、それらの株主と正面から向き合えなかったのか。検証と実効ある組織改革が必要だ。

 調査報告書は、東芝幹部が当時の菅義偉官房長官に株主総会の対処方針を説明したとも指摘している。菅氏はこの疑いを否定している。

 東芝だけでなく、日本企業が投資に値するのかどうかが問われていることを政官民は直視するべきだ。

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