社説

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 認知症の高齢者が事故を起こした場合に、賠償金や見舞金を支給する神戸市独自の救済制度がスタートして3年目に入った。認知症「神戸モデル」として全国に知られる。

 厚生労働省の推計によると、2025年に日本の認知症患者は700万人前後となり、65歳以上の5人に1人を占めるという。認知症は誰もがなり得る病気であり、本人や家族を社会で支えることが重要だ。

 年齢を重ねても本人の意思が尊重され、地域で安心して暮らし続けられるよう、神戸の取り組みの成果や課題を広く共有したい。

 神戸モデルでは診断と救済がセットになっている。愛知県で07年に認知症の91歳男性が電車にはねられて死亡し、JR東海が家族に損害賠償を求めて提訴した事例を踏まえ、19年度に創設された。

 65歳以上の市民は無料で認知症診断を受けられる。かかりつけ医などで簡易検診を受け、認知症の「疑いあり」となれば、専門医療機関の精密検査に進む。そこで認知症と診断された人が救済対象となる。

 救済は見舞金と賠償金の「2階建て方式」を取る。認知症の人が火事や事故を起こしたら、被害者に最大3千万円の見舞金が支給される。さらに認知症患者が賠償責任を負う場合は、市と契約する保険会社から最大2億円が被害者に支払われる。ただし自動車事故は対象外だ。

 認知症の人が起こした事故では、責任能力の判断が難しい場合がある。このため神戸モデルは賠償責任の有無にかかわらず見舞金を払うことにした。被害者の早期救済につながる仕組みとして評価できる。

 賠償金は事前に市への登録を済ませた人が対象となる。21年2月末時点の登録者は6021人。精密検査で認知症と診断された人の約7割に当たる。幅広い救済のために制度の周知と登録率の向上が望まれる。

 見舞金や賠償金が支払われたケースは創設時以来11件あり、金額は計約130万円。入院中にナースコールを壊したり、隣の家の壁を鍵で傷つけたりした事例があった。

 神戸モデルは3年間の予定で始まり、来年度以降も続けるかは今後議論する。年間約3億円の予算は、個人市民税(均等割)を1人当たり年400円上乗せして確保してきた。財源についても議論を深め、市民の理解を得る努力をしてほしい。

 内容は異なるが、福岡県久留米市や名古屋市など救済制度を設ける自治体が増えている。だが、自治体任せでは地域差が広がりかねない。

 やはり国が救済策を講じるべきだ。神戸市などの先進事例の課題を洗い出し、使いやすく安心できる仕組みづくりを急がねばならない。

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