社説

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 兵庫県政史上最長の5期20年にわたり知事を務めた井戸敏三氏(75)がきょう、退任する。

 阪神・淡路大震災からの創造的復興に尽くした手腕が高く評価される一方、新型コロナウイルス対応を巡って発信力の弱さなどが批判にさらされた。前例のない難題に直面し、何ができて、何が課題として残されたのか。新しい県政を考える上で、その検証と総括が欠かせない。

 井戸氏は震災翌年の1996年、自治省(現総務省)の大臣官房審議官から県副知事に就いた。2001年、貝原俊民前知事の後継として立候補、初当選した。

 就任後は、県民と共に考え、取り組む「参画と協働」の県政を掲げた。貝原氏から引き継いだ復興計画の実現に努め、まちづくりや生活再建支援、県独自の住宅再建共済制度の創設などに心血を注いできた。

 南海トラフ地震への備えを進め、全国各地で起きた自然災害では、阪神・淡路の教訓を生かした支援を展開した。関西広域連合の連合長を発足から10年間務め、東日本大震災の被災地支援などにも成果を上げた。

 一方、井戸県政の20年は財政再建とともにあったと言える。復旧・復興事業のうち1兆3千億円を借金で賄ったため、当初から厳しい財政運営を余儀なくされた。08年度から行財政構造改革を断行し、18年度には収支均衡を達成するなど、危機的状況からの脱却にめどをつけた。

 「五国」の広大な県土を持つ兵庫では、多彩な地域の特性を生かし、バランスのある発展を図る必要がある。それは歴代知事が進めてきた県政の基本であり、井戸氏の手堅く安定した運営を評価する声は多い。

 ただ、任期最終盤のコロナ対応では、独自の施策を打ち出す各地の知事と比較され、発信力の弱さが際立った。多選の弊害か、公用車を巡る県民感覚とのずれが指摘される場面もあった。知事選で、約60年続く副知事への「禅譲」路線を批判し、県政の「刷新」を掲げた斎藤元彦氏(43)が当選する一因ともなった。

 長引くコロナ禍は地方にも変革を促している。それに伴って、県民が望む知事像にも変化がみられる。

 実務的な手腕だけでなく、困難に直面する人々の声に耳を傾け、施策を丁寧に説明する能力への期待がある。時代を先取りし、時には国と渡り合い、政策を提案するなど政治家としての力強さも求められている。

 井戸氏は退任会見で「20年間、変革と挑戦を続けてきた。今後もそうであってほしい」と述べた。

 行財政運営の不断の見直し、深刻な人口流出への対策、経済再生に防災…。山積する課題の克服は道半ばだ。新知事の手腕が早速問われる。

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