社説

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 英政府が、首都ロンドンを含むイングランド全域で、新型コロナウイルス対策の法的規制をほぼ撤廃した。イベントなどの人数制限や対人距離に関する規制がなくなり、ナイトクラブも営業できる。マスク着用も人混みの中では奨励されるが、義務ではなくなった。

 英国は昨年3月からロックダウン(都市封鎖)を断続的に実施し、長期にわたって厳しい規制を続けてきた。その撤廃は、「ウイルスとの共生」を掲げたジョンソン首相の政治判断によるものだ。政府の狙いは落ち込んだ経済の立て直しにある。

 個人の「良識」に委ねた感染抑止は可能なのか。英国内でも賛否が分かれる実験的試みの行方を注視したい。

 政策の背景にあるのは、ワクチン接種の進展だ。英国は欧米で最初に接種を始め、成人の約7割が2回目を完了した。その結果、1日当たりの死者数が100人前後と、ピーク時の今年1月から大幅に減っている。

 だが、ここに来て感染力が強い「デルタ株」の流行が広がっている。新規感染者数は減少傾向にあるものの、1日3万人前後となお高水準にあり、感染爆発や医療逼迫(ひっぱく)を引き起こす懸念が解消されたとは言い難い。

 そのため、マスクを外す人がいる一方で慎重な市民もまだ多い。撤廃直前の世論調査では、66%が「法的規制を続けるべきだ」と答えた。ロンドン市もバスや地下鉄でのマスク着用を引き続き義務化するなど政府と異なる対応を見せている。

 ジョンソン首相はこれまで以上に慎重に感染状況を見極め、再規制も視野に入れて判断することが求められる。

 日本でも高齢者の7割がワクチンの2回接種を終えたが、全体では3割に満たない。デルタ株が猛威を振るい、1日の新規感染者が1万人を超えた。8月から緊急事態宣言が追加発令されるなど深刻な状況が続く。

 国内では、当面は感染抑止策が急務だ。ただ、ワクチンが国民に行き渡ったときには、日常を取り戻すための先行事例として英国の「実験」は参考になるだろう。経済活動や市民生活の制限解除を巡る議論に向け、日本政府は現地の詳細なデータを集めておくべきだ。

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