社説

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 NHKには、経営や業務をチェックする経営委員会が置かれている。ただし、放送の自由・自律を守るため、個別の番組に対する介入は放送法で禁止されている。

 3年前の会合でその法の規定から逸脱し、委員長代行だった森下俊三氏(現委員長、元NTT西日本社長)や、委員長だった石原進氏(元JR九州会長)らが番組内容や取材手法を執拗(しつよう)に批判していたことが、開示された議事録で確かめられた。

 驚くのは、法に反する恐れを認識しつつ、番組批判を「ガバナンス(企業統治)」の在り方にすり替えて議論していたことだ。「確信犯」とみられても仕方がない。「経営委のガバナンス自体に問題がある」と厳しく批判されるのは当然である。

 法令順守に疑念が生じた以上、森下氏は委員を辞するべきだ。

 問題視されたのは2018年10月23日の経営委のやりとりである。

 当時、日本郵政グループ傘下のかんぽ生命保険不正販売問題を「クローズアップ現代+(プラス)」が報道したのに対し、郵政グループがNHKの上田良一会長(当時)に書面で抗議していた。それを受けて経営委が意見交換し、石原委員長が上田会長に厳重注意するに至った。

 さらにNHK会長が日本郵政側に文書で事実上の謝罪をし、日本郵政が経営委に感謝の文書を送るという、耳を疑う展開になった。

 郵政グループが特にやり玉に挙げたのは、NHKがツイッターで視聴者に情報提供を呼び掛けた取材手法だ。自ら社内調査もせずに抗議をしていた。顧客に約1300万円の損害を与えた事態を深刻に捉える姿勢に欠けていたというほかない。

 軽率に番組を批判した経営委の在り方も問われる。これまで議事概要しか公表していなかったが、NHK情報公開・個人情報保護審議委員会の2度の全面開示答申を受けて、ようやく開示に応じた。

 それによると、森下氏は「(番組の)作り方に問題がある」と追及し、石原氏も番組介入が「法律に触れる」との認識を示唆しつつ、同様に「問題だ」などと繰り返した。

 議論となった番組について、NHKの監査委員は「ガバナンスの瑕疵(かし)は認められない」との結論を出していた。ところが経営委はガバナンスに問題があると決め付けた。結果的に、不正の当事者の不当な抗議を受け入れる形になった。取材・報道の現場に及ぼした影響は重大である。

 今年3月に森下氏の委員再任が国会で承認された際、多くの野党は反対した。視聴者への説明責任を果たしておらず、適任とは言い難い。

 この際、経営委全体の顔ぶれも刷新する必要があるのではないか。

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