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 米モデルナ社製の新型コロナワクチンの一部に異物が混入し、国民の間に不安が広がっている。厚生労働省は、全国の約900会場に配送された計3ロット、計約163万回分のワクチンの使用を中止した。同時期に同じ製造ラインでつくられたワクチンを接種した30代の男性2人が亡くなっていたことも分かった。

 ワクチンの信頼性を揺るがしかねない事態である。政府は国民の不安を払拭(ふっしょく)するため、正確な情報を速やかに発信してもらいたい。

 異物混入が確認されたのは、モデルナ社が委託契約を結ぶスペインの製薬会社の工場で製造したワクチンで、5都県の接種会場で計39本の未使用状態の瓶から見つかった。

 厚労省はその後、国内の供給を担う武田薬品工業が調査した結果、異物はステンレスだったと発表した。製造機器の破片という。心臓の人工弁などに使用されるステンレスで、体内に入り込んでも医療上のリスクが高まる可能性は低いとする。

 副反応の恐れなどワクチンへの根強い不安がある状況で、混入防止対策や、混入が確認された場合の使用中止の徹底は十分だったのか。

 発表に至る経緯にも疑問が残る。異物が混入した瓶は8月13日以降に順次見つかった。だが、武田薬品が厚労省に連絡したのは25日で、同省の発表は26日未明だった。

 モデルナ社製は自治体の集団接種や、企業や大学の職域接種などで使われている。使用を見合わせるとしたワクチンのうち3分の1に当たる50万回強が既に接種済みだった。兵庫県内では神戸や伊丹などで少なくとも約4万1500人に使われていた。なぜ時間がかかったのか。政府の対応の遅れが影響をさらに広げたことを重く受け止めねばならない。

 一方、死亡した2人は2回目の接種後だったという。使用したワクチンに異物が混入していたかどうかは判明していない。因果関係について、武田薬品は「現時点では偶発的に生じたもの」との見解を示すが、国としても調査する必要がある。

 沖縄県や群馬県でも、モデルナ社製ワクチンの瓶から異物が確認された。注射器に充●(じゅうてん)する際などに混入したゴム栓の破片とみられ、厚労省は品質に問題はないとしている。

 菅義偉首相は異物混入について、「(今後の接種に)大きな影響を与えるものではない」と述べたが、認識が甘い。問題が完全に解決したわけではなく、各地で職域接種の中断などの混乱が広がっている。

 首相はワクチン接種を感染防止の「切り札」と位置づける。ならば、安全性を確認した代替品を供給するとともに、正確で迅速な情報開示と説明に全力を尽くすべきだ。

(注)●は「土」の右に「眞」

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