社説

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 行政デジタル化の司令塔となるデジタル庁が発足した。菅義偉首相が就任以来、実現に力を注いだ政権の看板政策である。

 コロナ禍では国や地方の行政手続きが混乱し、デジタル化の立ち遅れが浮き彫りになった。「デジタル敗戦」とも呼ばれる現状を改善するには、中央省庁や自治体の情報システムの規格統一化などが急務だ。

 ただ、霞が関の専門人材不足を補うため、デジタル庁の職員約600人のうち3割超をIT関連の民間企業出身者が占める。企業に所属したまま働く非常勤職員もおり、異例の官民混成部隊となった。

 入札情報漏えいなどの不正行為を防止できるか懸念が拭えず、個人情報の保護にも課題を残している。危うさをはらんだ船出であることを、関係者は肝に銘じるべきだ。

 首相は「役所に行かなくてもあらゆる手続きを可能にする」とデジタル化のメリットを強調する。だが、前途は多難というしかない。

 コロナ禍では、生活支援や雇用確保対策などの申請で、情報システムのトラブルが続出した。自治体の現場では、職員が書類を読み合わせて内容をチェックするなど、むしろ多くの時間を要する結果となった。

 デジタル庁は、他省庁に業務改善などを勧告できる強い権限を持つ。デジタル化関連経費も、2022年度予算からはデジタル庁が一括して計上する。初年度の概算要求は5400億円を超える見通しだ。

 新型コロナウイルスのワクチン接種歴を証明する「ワクチンパスポート」を年末までに電子化し、来年度中に預貯金口座をマイナンバーカードと一緒に事前登録できる制度を作る。マイナンバーカードと運転免許証の一体化も目指す。

 ただ、省庁のホームページや政策、人事、事業などの情報システムは約720に上る。政府はこれらを統合する「共通プラットフォーム」の構築に13年度から取り組んだが、現場ではほとんど利用されず、このほど打ち切りが決まった。

 今後はデジタル庁が新たな統合システムを作り直すというが、利用されなかった原因や問題点を詳細に検証しなければ、同じ失敗を繰り返すことにならないか。

 サービスの利用に必要となるマイナンバーカードの交付率も4割に満たない。国が個人情報を掌握することへの不安は根強い。自治体が先行する個人情報保護制度も、先の法改正により条例で規定できなくなるなどの「後退」が指摘されている。

 どれほど利便性を強調しても、業務に関する説明を尽くし、透明度を高める努力を怠れば、国民の理解はなかなか得られないだろう。

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