社説

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 政府は21都道府県に出している新型コロナウイルス緊急事態宣言について、兵庫や東京、大阪など19都道府県の期限を、12日から30日に延長することを決めた。12県に適用中のまん延防止等重点措置は、解除や宣言からの移行で8県に変更する。

 新規感染者数は減少傾向に転じ、感染拡大の「第5波」はピークを越えたとみる専門家もいる。だが重症者は2100人超、自宅療養者も13万人以上に膨らんだ。医療の現場や保健所の逼迫(ひっぱく)は続いており、とても宣言を解除できる状況にはない。

 4度目の宣言は7月12日に東京都で発令され、他の道府県に拡大された。この間、東京五輪、パラリンピックが開催された。専門家はその祝祭ムードによる緩みを指摘したが、政府は警告を無視した。宣言延長に至った責任は重い。

 今回の宣言解除の判断では、政府の専門家分科会が策定した新基準が採用された。医療の状況をより重視し、病床確保の重要性を反映させたことは理解できる。

 ただ、解除後にリバウンドが繰り返されており、さまざまな指標に目を配る必要がある。6月の宣言解除で「五輪ありき」だと批判されたことは忘れてはならない。

 菅義偉首相は会見で「コロナ対策に専念すべきと思い、自民党総裁選に出ないと判断した」と改めて述べた。だが、既に「レームダック(死に体)」による政治空白で、追加経済対策などの遅れは避けられない。

 懸念されるのは、退陣を表明した首相が、宣言延長に合わせて行動制限緩和方針を示したことだ。ワクチン接種や検査の陰性証明を条件に旅行や大規模イベントを認め、飲食店での酒類提供も容認するという。

 「出口戦略」を最後の成果にしたいとの首相の思惑がうかがえる。しかも具体策は次期政権に丸投げすることになり、無責任というしかない。何より方針は、接種をすればすぐに行動を広げてもよいという誤ったメッセージになりかねない。体質的に接種ができない人などには不利益になる恐れもある。

 緩和に合わせ「Go To トラベル」のような観光振興策も検討するという。感染拡大の一因になったという反省を踏まえれば、時期尚早ではないか。

 ワクチン接種や新薬が普及したとしても一定数の重症化は免れない。行動制限の緩和を含め、どのような「ウィズコロナ」の社会を築くのか国民的な議論は欠かせない。

 緊急事態宣言の延長期間は総裁選と重なる。首相は自らの言葉通り政局と距離を置き、残りの任期で宣言の解除ができるよう、感染対策に全力を尽くすべきだ。

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