社説

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 厚生労働省が労災認定の基準を20年ぶりに見直した。過重労働や精神的ストレスで追い詰められる労働者は後を絶たず、幅広い救済につなげる必要がある。

 新たな基準は、働き手が脳や心臓の病気を発症した場合に、残業時間がいわゆる「過労死ライン」に達していなくても、不規則な勤務による身体への負荷が大きければ柔軟に労災を認定できるようにした。

 具体的には、休日のない連続勤務や、終業から次の始業までの間隔が短い勤務などを判断材料に加える。近年の医学的な知見を踏まえ、厚労省の専門家検討会が認定基準の変更を提言していた。

 これまでの労災認定は、残業時間が「発症前2~6カ月の月平均で80時間」か「直近1カ月に100時間」という過労死ラインを重視するあまり、硬直的になっているとの批判があった。ここ数年、労災が認められた件数のうち過労死ライン未満のケースは1割程度にとどまる。

 新基準により残業時間以外の要因が適切に評価されるのであれば、わずかながら前進といえる。認定に当たる各地の労働基準監督署には、働く人の実態に即した総合的かつ柔軟な判断が求められる。

 残念なのは、過労死ラインそのものは変更されず維持されたことだ。

 世界保健機関(WHO)と国際労働機関(ILO)は5月、週55時間以上の長時間労働が深刻な健康被害をもたらすとの調査結果をまとめた。2016年には世界で約75万人が過労による脳卒中や心疾患で亡くなったという。

 週55時間労働は月60時間の残業時間に相当する。日本の過労死ラインは明らかに高く、働き手を守るには不十分と言わざるを得ない。引き下げへ向けた議論を今から始めたい。

 同時に、国や企業は労災防止、過労死ゼロの取り組みを着実に進めねばならない。

 厚労省の20年度統計によると、劣悪な職場環境がまん延している実態が浮き彫りになった。うつ病などの精神障害で労災認定されたのは608件で過去最多となった。原因のトップはパワハラだった。脳や心臓疾患での労災認定は194件、うち死亡は67人といずれも前年より減ったとはいえ、高水準のままだ。

 新型コロナウイルスの感染拡大で、テレワークや副業、フリーランスといった労働時間が把握しにくい働き方が増えている点も懸念される。政府がこのほど閣議決定した「過労死防止大綱」は、こうした新しい勤務形態の実態を調査するとした。

 医療現場や保健所などの過重労働の緩和を含め、コロナ禍に対応した実態調査や対策が急がれる。

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