社説

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 岸田文雄首相はきのう、国会で就任後初めてとなる所信表明演説を行い、新内閣の基本方針を示した。

 前政権が憲法に基づく野党の早期召集要求に応じなかったため、通常国会閉幕から3カ月以上、本格的な論戦は交わされていない。

 さらに首相は就任早々、次期衆院選の投開票日を今月31日とすると表明した。代表質問のみを実施し、閉会日の14日に衆院を解散する。事実上の選挙戦に突入したかのような状況だが、野党との国会論戦に正面から向き合うべきだ。

 最重要課題は新型コロナウイルス対策である。演説では「常に最悪を想定した危機管理」をアピールし、司令塔機能の強化や、医療体制確保に向け法改正を進めると表明した。その上で、経口治療薬の年内実用化、電子的なワクチン接種証明の積極的活用など「安心確保の取り組みの全体像」を示していくとした。

 感染が再拡大すれば、経済の停滞も余儀なくされる。流行「第6波」に備え、医療が適切に提供される体制を急ぎ整えねばならない。

 経済対策では、安倍政権の経済政策アベノミクスの修正を図る。「新しい資本主義の実現」を掲げ、競争や成長偏重ではなく所得再分配などの格差是正に軸足を移すとした。

 「分配なくして次の成長なし」を掲げて中間層を守ると訴え、看護や介護、保育など公的な職種の所得向上などに取り組む。一定評価できるが、具体的な方策や実施時期への言及が乏しかったのは残念だ。

 首相には政策実現への道筋を明確に語る責務がある。ところが演説では、山積する政権の課題に対し、総花的に政策を羅列した印象が拭えない。衆院選を控え、痛みを伴う政策への言及を避けるのではなく、財政再建策や国民負担の方向性も併せて示さなければ説得力に欠ける。

 外交・安全保障については、現状路線の継承にとどまった。進展が見られない北朝鮮の拉致問題では「条件を付けず金正恩氏と向き合う」と述べたものの、従来方針の検証抜きに展望は開けまい。ロシアとの北方領土返還交渉も同様だろう。

 安倍、菅両政権で相次いだ「政治とカネ」問題も重要事案だが、言及は一切なかった。政治の信頼回復には、十分な説明と国民の納得が欠かせないと肝に銘じてほしい。

 岸田首相は「国民の声を真摯(しんし)に受け止める信頼と共感を得られる政治が必要だ」と力説した。対話重視を貫けるかどうかは、政権の命運を握る。国会軽視の姿勢を改め、丁寧な議論を尽くすことを求めたい。

 野党の力量も問われる。批判だけではなく対案に磨きをかけ、建設的な政策論争を挑んでもらいたい。

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