社説

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 被差別部落の地名リストをウェブサイトに掲載し、書籍化も計画した川崎市の出版社に対し、東京地裁が「差別を助長する行為だ」としてサイトの削除と出版禁止、原告234人への約488万円の損害賠償を命じる判決を言い渡した。

 官民による人権啓発などの積み重ねで、あからさまな差別行為はかなり影を潜めたが、差別意識は今も根強く残る。ネットでの拡散が人権侵害につながる恐れも指摘されている。

 判決が地名公表を「違法」と断じたのは当然だ。出版界だけでなく、ウェブサイトや会員制交流サイト(SNS)を運営する事業者も、人権を守る取り組みを強化しなければならない。

 この出版社は、全国5千カ所以上の地名リストを記載した戦前の書籍の復刻出版を目指し、2016年2月にまず地名リストを複数のサイトに掲載した。さらに、差別反対運動に取り組む部落解放同盟幹部らの生年月日や電話番号などの個人情報も無断でネット上に公表した。

 この問題では、横浜地裁などが出版とサイト掲載の差し止めを命じ、出版社側がそれにすぐ応じなかった経緯がある、

 出版社側は「差し止めは学問の自由の侵害に当たる」などと反論したが、判決は「公益目的でないことは明らか」と退けた。その上で、差別や誹謗(ひぼう)中傷の恐れがある地名や個人情報の公表は「違法なプライバシー侵害」との判断を示した。

 差別をあおるサイトは後を絶たない。教育や啓発に主眼を置いた部落差別解消推進法が16年に制定されたものの、罰則はなく、被害の防止や回復を司法に委ねざるを得ない状況だ。

 兵庫県内では今年5月、丹波篠山市内の特定地区を撮影した動画をネット公開したまま放置した東京のサイト管理会社に、神戸地裁柏原支部が、全国初とみられる動画削除の仮処分命令を出した。今回の東京地裁判決とともにネットでの差別を抑止する効果が期待される。

 ただ、判決は現住所などが地名リストにない原告にはプライバシー侵害を認定しなかった。個別の事情に関係なく差別自体を厳しく禁じる姿勢を、司法は明確にすべきである。今後の踏み込んだ判断を求めたい。

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