社説

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 衆院選で議論を深めるべきテーマに、外交の基本姿勢がある。

 菅政権は短命に終わったが、前任の首相である安倍晋三氏は7年8カ月間の在任中、「地球儀を俯瞰(ふかん)する外交」を掲げ、80回以上も外遊を重ねた。歴代首相で飛び抜けて多い。

 トップ自らの積極外交が、日本の存在感を示す上で一定の成果を挙げたのは確かだろう。ただ、姿勢に偏りがあったのも事実である。

 米国には10回以上も足を運び、トランプ前大統領との対面、電話会談は50回を超えた。ロシアのプーチン大統領との会談も27回に及んだ。一方で中国訪問は4回にとどまり、隣国・韓国も公式訪問は平昌冬季五輪開会式出席など2回だけだ。

 歴史認識を巡る対立などの難題を抱えるとはいえ、近隣諸国との関係が冷え込んだ現状は、安全保障上も決して好ましくない。

 「プーチン詣で」と言われたロシア外交も、肝心の北方領土交渉が行き詰まり、多くの疑問を残す。

 安倍外交の何を引き継ぎ、どこを改めるのか。各党は国民に分かりやすく論戦を展開してもらいたい。

 米国との関係が外交の柱であるとの認識は、各党ともおおむね共通する。自民党はオーストラリアやインドなども加えた連携拡大で「自由で開かれたインド太平洋」を推進すると訴える。公明党も「日米同盟の強化」を掲げ、日本維新の会や国民民主党もほぼ同様の主張だ。

 立憲民主党は、日米関係に加えて近隣諸国との多国間協力推進を挙げている。ミサイル発射などで挑発を重ねる北朝鮮に対処するためには、韓国も含めた多国間の結束が欠かせない。安倍外交の偏りを解消する取り組みが重要になる。

 共産党と社民党は、日米安保条約を友好条約や平和条約に転換することを主張し、他党と一線を画す。東南アジア諸国連合(ASEAN)をモデルにして共産が提案する「北東アジア平和協力構想」は、平和と安定につながる将来的な枠組み構築の道筋として検討に値する。

 バイデン米政権も、トランプ政権の自国第一主義から一転して友好国との共同歩調を重視する。その基本姿勢を共有しながら日本の独自性をどのように発揮するかが問われる。

 その試金石となるのが、台頭する中国との向き合い方だ。米中対立で台湾海峡の緊張が高まる中、日本が果たすべきは力による対峙(たいじ)でなく、対話を通して危機を回避する「ソフトパワー」の役割だろう。

 立場が異なる相手との交渉力を高めることで、北朝鮮の日本人拉致問題解決にも展望を開きたい。「平和国家」の外交はどうあるべきか、踏み込んだやりとりを期待する。

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