社説

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 東京都調布市を走行中の京王線の特急電車内で、男が刃物で男性を刺し、液体をまいて放火した。男性は重体となり、ほかに男女16人がけがをした。警視庁は殺人未遂容疑で24歳の容疑者を現行犯逮捕した。

 炎が燃え上がり、別の車両に慌てて避難する人々の動画を乗客が撮影し、ニュースなどで流された。閉じられた空間で発生した衝撃的な事件であり、映像を見て恐怖を覚えた人も多かったに違いない。

 容疑者は「東京なら人をたくさん殺せると思った」と供述し、「仕事で失敗し、友人関係もうまくいかなかった。人を殺して死刑になりかたった」と説明したという。それが動機の一端とすれば、見ず知らずの人々を巻き込んだあまりにも身勝手な凶行と言うしかない。

 容疑者は6月ごろにトラブルで福岡の会社を辞め、神戸や名古屋のホテルを転々としていたという。車内では米コミックの悪役の衣装を身に着け、ライターオイルなども準備していた。捜査本部は計画的な無差別襲撃とみており、事件に至る経緯や詳しい動機の解明が待たれる。

 東京では8月、小田急線の車内で30代の男が乗客10人に切り付け、サラダ油に火を付けようとした事件が起きた。今回の容疑者はこれを参考にし「可燃性の高いオイルを用意した」と述べたという。

 3年前には東海道新幹線の車内でも3人が殺傷されている。同様の事件が続く事実を踏まえれば、再発防止策を強化すべきだろう。

 国土交通省は今回、鉄道各社との緊急会議を開き、安全確保などの対策を改めて求めた。阪急電鉄はこれに先立ち、駅構内や車内の巡回を増やした。小田急電鉄は凶器から身を守る盾と防刃手袋の配備を進め、東京メトロの乗務員も護身用道具を携帯し、扱う練習をしている。

 ただ、乗客を守る対応には限界がある。京王線の事件の映像には、ドアが開かず、窓から脱出する乗客が写っていた。突発的な事態では、乗客自身で、いかにすみやかに避難できるかも重要になる。

 ドアが開かなかったのは、緊急停車で車両が正しい位置に止まらなかったためだ。線路に転落する危険があり、開けなかったという。国交省はこれを受け、緊急時には「迷ったら開けて逃がす」との見解を鉄道各社に示した。実際には難しい判断であり、訓練などが欠かせない。

 事件や事故から乗客を守るには、ケース・バイ・ケースで瞬時に現場対応するしかなく、簡単な正解はない。国や警察、鉄道会社などの関係機関であらゆる状況を想定し、専門家の意見も聴きながら、安全確保への検討を重ねてもらいたい。

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