社説

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 小笠原諸島の海底火山「福徳岡ノ場(ふくとくおかのば)」の噴火で発生したとみられる軽石が太平洋上を漂流し、千キロ以上も離れた沖縄、鹿児島県の島々に大量に漂着した。漁業や観光業に深刻な被害をもたらしている。前例のない自然災害であり、影響はさらに広がる恐れがある。政府は関係機関と協力して監視を強化し、対策と支援を加速させなければならない。

 火山の噴火は8月中旬だった。産業技術総合研究所の分析によると、明治以降では国内最大規模といい、軽石などの噴出物の量は1億~5億立方メートルに達するとみられる。

 沖縄県では各地で漁に出られない事態となり、離島航路のフェリーが運休した。ホテルのビーチは軽石に覆い尽くされ、コロナ禍による減収に苦しむ観光業に追い打ちをかけている。米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設工事も一時中断した。

 鹿児島県の与論島ではタンカーが接岸できず、発電用重油の供給が滞った。経済活動や日常生活に支障を来しかねない状況だ。サンゴなど生態系への悪影響も懸念される。

 ショベルカーですくい上げるなどの地道な作業が続く中、国土交通省は軽石回収の事例をまとめ、民間の技術も募っている。より効果的な対策を早急に示す必要がある。

 政府は関係省庁による対策会議を設置し、軽石の回収や船舶の安全確保、漁業被害への支援などに当たる方針を決めた。港湾での除去作業は災害復旧事業を適用し、砂浜や海岸では環境省の事業を活用して、それぞれ財政支援に当たるという。

 撤去、回収した軽石の処分方法も課題だ。捨てる場所を確保するとともに、安全性を確認し、資材などへの有効活用はできないだろうか。

 大量の軽石は黒潮に乗り、既に伊豆諸島に到達した。海洋研究開発機構がスーパーコンピューターで予測したところ、今月下旬には神奈川県や千葉県など関東沖合に達する可能性があるとの結果が出た。高知県沖でも漂流物が確認されている。

 どこに、どれだけの量が漂着するかは、潮の満ち引きや風に左右されるほか漂流中に浮力を失って海に沈んでいく場合もあり、正確な予測は難しいという。引き続き情報収集に努め、予測の精度を高めたい。

 被害の拡大防止にはオイルフェンスを張るなど軽石を港に入れない措置が有効だが、その間は船舶の出入りができなくなる。政府は自治体や関係機関と連携し、影響を最小限に抑える方法を探ってほしい。

 火山大国の日本では、噴火の規模によっては、今後も想定外の事態が生じる恐れがある。今回の被害を、火山災害への幅広い備えを充実させる契機にすべきだ。

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