社説

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 原油価格の高騰はモノやサービスのコストを押し上げ、世界経済や市民生活に大きな影響を及ぼす。価格の安定には、産油国との対話を促進するなど長期的視野に立った不断の努力が欠かせない。

 政府は、石油の国家備蓄の一部を初めて放出する。米バイデン政権の強い要請を受け、中国、英国、韓国、インドの計6カ国が足並みをそろえる。極めて異例の行動だ。原油高がコロナ禍からの経済回復に冷や水を浴びせかねないためである。

 しかし、どれだけの効果があるかははっきりしない。

 日本の放出量数百万バレルは、国内消費量の数日分にとどまる。各国の放出分を合わせても、市場を冷ますには不十分だろう。懐疑的な投資家は多く、岸田文雄首相が放出決定を表明した日の東京商品取引所では、原油先物市場が大きく値を上げた。

 さらに懸念されるのは、産油国の反発だ。石油輸出国機構(OPEC)とロシアなどでつくる「OPECプラス」は、コロナの感染再拡大を警戒して大幅な増産に慎重姿勢を崩していない。日米などの備蓄放出への対抗措置として、生産量を絞るような事態になれば、原油価格はさらに高騰する恐れがある。

 石油の消費国と産出国との深刻な対立は避けねばならない。市場の安定へ、両者は協調の道を急ぎ探ってほしい。

 日本政府は直前まで備蓄放出に否定的だった。それが一転したのは、ガソリン高騰などで支持率が低迷する米バイデン政権からの求めに応じざるを得なかったためだ。初の日米首脳会談を調整する岸田首相にとって、バイデン大統領との信頼関係の構築は急務でもあった。

 そこで政府は、「奇策」ともいえる手段に出た。

 1970年代の石油ショックを受けて制定された石油備蓄法は、紛争や災害による需給逼迫(ひっぱく)が起きた場合に限り備蓄の放出を認めている。価格抑制を目的とするには法改正が必要とされる。政府が今回の措置を「備蓄の定期的な入れ替えに伴うもの」と強調するのは、法に抵触するとの批判を避ける狙いからだろう。

 有事に備え、国家備蓄の放出には慎重さが求められる。ごまかしや場当たり的な対処ではなく、法律の見直しが必要であれば、国会で丁寧に議論するのが筋ではないか。

 産油国が追加増産に消極的なのは、世界的な脱炭素の潮流に対する将来不安もある。

 日本をはじめ石油消費国は、再生可能エネルギーの拡大などの気候変動対策を着実に進めつつ、産油国と連携して脱化石燃料へのスムーズな転換に取り組まねばならない。

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