社説

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 日本大学医学部付属板橋病院(東京都)を巡る背任事件で、日大の元理事ら3人が、背任罪で東京地検特捜部に起訴された。

 事件では、元理事の井ノ口忠男被告と大阪市の医療法人「錦秀会」前理事長の籔本雅巳被告らが、付属病院建て替え工事の設計監理業務や医療機器などの納入に関係し、日大に損害を与えたとされる。実体がない会社を介在させるなどして計約4億2千万円を流出させたという。

 起訴された内容が事実なら悪質極まりない行為であり、学問の府の信頼が根本から揺らぐことになる。特捜部は、資金の流れの全容を徹底的に解明してもらいたい。

 明治期に創立された日大には16の学部と大学院などがあり、全国最多の7万人近い学生が在籍する。学生から授業料を徴収し、国からの助成を受ける公的な教育機関であり、わずかな不正も許されない。

 日大は元理事の起訴を受け、事件の原因究明と再発防止を図り、コンプライアンス(法令順守)を徹底するとのコメントを出した。理解し難いのが、一度も記者会見を開いていない点だ。大学としての事実関係の解明と情報公開は欠かせない。

 付属病院の設計契約が業務委託されたのは日大の関連会社「日本大学事業部」で、医療機器などの調達も担っていた。同社は取締役の井ノ口被告が実質支配していたとされ、大学関係者からは、利権が絡む「伏魔殿」と呼ばれていたという。

 井ノ口被告はアメリカンフットボール部OBでコーチも務めた。2018年の悪質タックル問題で理事を辞任したが、その後復権した。絶大な権力を誇る田中英寿理事長の側近で「自分の声は理事長の声」と話していたという。異様な状況である。

 学生や保護者からは「私腹を肥やすのなら学費を返してほしい」などの不満が上がり、就職活動への影響を懸念する声も出る。当然だろう。

 田中氏が説明を一切避けているのは看過できない。両被告は特捜部の調べに対し、建て替え工事の業者選定や医療機器納入の謝礼などとして、それぞれ田中氏に数千万円を提供したと供述しているという。特捜部が田中氏の自宅を家宅捜索した際、現金1億円超が見つかっており、所得隠しの疑いも持たれている。

 田中氏は、悪質タックル問題の際も「説明責任を果たしていない」として教職員に提訴された。現金の授受を否定しているが、トップとしての責任は免れない。不透明な経営体質のままでは、教育機関としての信頼回復など望むべくもない。

 田中氏を含めた大学幹部は早急に会見を開き、一連の疑惑について自らの言葉で説明すべきだ。

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