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 香港の議会に当たる立法会の選挙が行われ、中国の習近平指導部に従順な「親中派」が定数90のうち中間派の1議席を除いて、独占した。民主派が立候補できないよう5月に選挙制度が変更されており、その影響が如実に表れた結果と言える。

 中国国営メディアは選挙戦での「市民の熱気」を伝えたが、実際に有権者が投票できる直接選挙枠は20議席しかなく、投票率は30%と過去最低で、変更前の2016年選挙の58%を大きく下回った。「民主制度を装った茶番」とする内外の批判に、習指導部や香港当局は正面から向き合わねばならない。

 中国の立法機関である全国人民代表大会が今年3月に選挙制度の変更を決定し、5月に法整備が完了した。立候補者が「愛国者」かどうか、「香港への忠誠度」を事前に審査する委員会が新設され、民主派に有利な直接選挙枠の定数が35から減らされた。

 今回は制度変更後初の選挙となったが、最初から「親中派圧勝」の結果は見えていたと言える。

 中国共産党に反対しない「愛国者」だけを認める選挙制度は多様な民意の反映には程遠い。このままでは「東洋の真珠」と呼ばれた香港が輝きを維持するのは困難だろう。

 中国の対外貿易量の5分の1を扱う自由貿易港の経済力が陰りを見せれば、中国本土の経済も大きな打撃を受ける。日本をはじめとする国際社会は、そうした懸念を粘り強く伝え続ける必要がある。

 英国領だった香港は1997年の返還後も独自の基本法を持ち、本土と一線を画してきた。中国は「一国二制度」を50年間維持すると国際社会に公約し、容認してきた。

 中国が選挙制度の変更に踏み切ったのは、「雨傘運動」など民主化デモの高まりに危機感を抱いたからだろう。犯罪容疑者の中国本土引き渡しを可能にする「逃亡犯条例」改正案は撤回に追い込まれたものの、1万人以上が逮捕、拘束される混乱を招いた。

 昨年施行された香港国家安全維持法による逮捕や資産凍結などの取り締まりは強まるばかりで、批判的な姿勢の香港紙「蘋果日報(リンゴ日報)」も廃刊に追い込まれた。

 民主派支持層は一般有権者447万人の約6割を占めるが、今回は選挙ボイコットの呼び掛けが広がった。多くの人たちの選挙不参加は、一党独裁への「反対」や「不信任」の意思表示にほかならない。

 中国は軍事的圧力や少数民族の人権抑圧など、内外で強権姿勢を強めている。不満が鬱積(うっせき)すれば自らの足元が不安定になりかねないことを、深く自省すべきである。

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