社説

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 政府は、2022年度予算案を閣議決定した。一般会計の歳出総額は107兆5964億円と10年連続で過去最大を更新した。税収は約65兆円と過去最大を見込むが、歳入全体の3割強を新たな国債発行で賄う借金頼みの編成は相変わらずだ。一層の財政悪化は避けられそうもない。

 新型コロナウイルス禍が収束しても、少子高齢化による構造的な問題は変わらない。岸田文雄首相が唱える「新しい資本主義」は、国民の将来不安を軽減し、社会の活力を取り戻すことができるのか。その道筋はまだ見えてこない。

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 コロナ対策では、21年度当初予算と同様、事実上政府が自由に使える予備費5兆円を計上した。

 安倍政権による布マスク配布は大量の在庫を廃棄することになった。菅政権では「Go To トラベル」事業が停止に追い込まれ、岸田政権でも18歳以下への10万円給付の政策効果が疑問視されている。

 過去の失政を反省し、「ばらまき」的な支出を見直し、本当に困っている人に届く事業に絞り込む必要がある。持続可能な経済社会活動に資する「賢い支出」に重心を移す時期を見誤ってはならない。

 社会保障費は歳出全体の3分の1を占め、当初予算案では初めて36兆円を超えた。来年は団塊の世代が後期高齢者になり始め、社会保障費の割合はますます大きくなる。持続可能な年金・医療制度の財源の確保策は喫緊の課題である。

 首相が力点を置く分配政策では、看護師らの賃上げなどが目玉という。だが、人件費の原資として受け取る診療報酬をどう分配するかは医療機関ごとに決めているのが現状だ。医療や介護などの現場を担う人たちに確実に恩恵が行き渡る仕組みづくりを急がねばならない。

 防衛費は10年連続で増え、過去最高の5兆4005億円に膨らむ。一体的に編成された21年度補正予算と合わせた総額は6兆1744億円で目安とされてきた国内総生産(GDP)の1%を突破する見通しだ。

 専守防衛を逸脱しかねない「敵基地攻撃能力」保有を見据えた装備の強化など、議論が不十分なまま計上された項目も少なくない。中国の軍備強化に対抗し、米側からは日本の防衛費増額への期待が示されているが、コロナ禍の中、国民の理解が得られるかは不透明だ。

 米軍と自衛隊がどこまで連携するかなど費用の根拠となる防衛政策の在り方について、国民のコンセンサスを得る議論は欠かせない。

財政再建の道筋を

 見過ごせないのは、自民党内で財政再建より経済成長を優先させる積極財政派の存在感が増していることだ。安倍晋三元首相や高市早苗政調会長らが「財政政策検討本部」を立ち上げ、コロナ禍での財政出動の成果を自画自賛している。政府の基本方針にも党が注文を付け、例年踏襲されてきた「聖域なき歳出改革」の文言を軒並み削った。

 岸田首相は「経済あっての財政、順番を間違えてはならない」と繰り返し、財政悪化を容認する姿勢だ。

 これまで政府は、毎年夏に決定する経済財政運営の指針「骨太方針」で歳出に一定の歯止めをかけてきた。それを骨抜きにしようとする動きにほかならない。

 際限のない歳出拡大と、政権トップの危機感の薄さは日本の財政の信認低下に直結する。首相は肝に銘じ、財政再建の道筋を示すべきだ。

力不足の分配政策

 税制面からも、首相が唱える「新しい資本主義」や「分配と成長の好循環」の姿ははっきりしない。

 政府は22年度税制改正大綱で、株式などの資産を多く持つ富裕層への金融所得課税の強化や、二酸化炭素の排出量に応じた炭素税の本格導入を先送りした。世代間の負担の公平性を保つための年金への課税の是非も、ほとんど議論されていない。

 目指す経済社会と税制の在り方を示すのは政権の責務である。来夏の参院選をにらみ、難題を先送りするのはあまりに無責任ではないか。

 具体策として並んだのは、賃上げに取り組んだ企業の優遇、ベンチャー企業への出資促進などだ。いずれも既存施策の延長にとどまり、十分な成果が出ているわけでもない。格差を是正し、再分配機能を高める政策転換に本気で取り組むべきだ。

 年明けの通常国会では、与野党がコロナ禍の先の社会像を競い、予算案や税制の在り方を徹底的に審議しなければならない。首相の「聞く力」と、野党の「政策立案力」がかみ合った深い政策論争を求める。

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