社説

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 長引くコロナ禍が、弱い立場の人を直撃しています。経済格差が広がり、生活困窮世帯が増加しました。一方で、豪雨などの自然災害が相次ぎ、そのたびに多くの被災者が生まれています。避けることのできない災禍が続く中、改めて浮き彫りになったのが支え合う大切さです。ボランティアや社会貢献活動の重要性は年々高まっています。

 ここ数年、それを実感した人も少なくないのではないでしょうか。

 今年は団塊世代が75歳以上の後期高齢者になり始め、この国の少子高齢化が一段進んだ局面に入ります。私たちは世代を超えて、ぬくもりのある社会を築く道筋を見いだしていかなければなりません。

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 ヒントにしたい取り組みがあります。神戸市が昨年、新型コロナワクチンの接種予約を巡って急ごしらえした「お助け隊」です。インターネットに不慣れな高齢者の予約を手助けするアルバイトで、大学生を中心に2208人が登録しました。

 4月20日、計12会場に2人ずつ配置するかたちでスタートしました。すると高齢者から「助け」への要望が相次ぎ、会場は巡回会場を含めて延べ132カ所に膨らみました。

 接種可能な病院の一覧を掲示するなど若者たちも工夫を重ね、活動を終えた8月末までに13万5千件余りの予約をサポートしました。これは予約全体の15%を占めます。

 高齢者から多くの感謝の言葉が届き、参加者にとって胸を張れる経験になりました。

誰かのために働く

 お助け隊は地域貢献活動であると同時に、コロナ禍で収入が細った学生たちを支援する意味合いも持っていました。無償のボランティアとは異なります。しかし、取材で出会った若者はアルバイト代をもらっただけではありませんでした。

 甲南大1年の中野好一朗さんは、友人に誘われて参加しました。中野さんはこれまで社会参画に特に興味はなく、高齢者と会話する機会もほとんどありませんでした。けれども、お助け隊では大きなやりがいを感じることができたそうです。

 「今までのバイトは自分のため。今回誰かのために働いて感謝してもらい、喜びを得られた。もっとお年寄りと話す機会がほしい」と目を輝かせながら話します。

 もともと社会貢献に関心があったという神戸大3年の則兼理央(のりかねりお)さんも「参加してみて、対面で人と触れ合う重要性が理解できた」と充実感を漂わせます。

 2人とも社会貢献活動に対して前向きになり、その後も、神戸市の里山環境保全プロジェクトに取り組む学生アルバイトをしています。

 参加した学生たちの多くが同じ思いを抱いたとすれば、こうした若い世代の気持ちをさらに育てていく必要があります。

助けて助けられる

 全国の学生1万人を対象にした日本財団学生ボランティアセンターの意識調査(2017年)では、「ボランティアに興味がある」とした人は6割に上ったものの、直近1年間に活動した人は3割弱でした。

 社会貢献への意欲がありながら、一歩を踏み出せない若者の姿が見えてきます。私たちがなすべきは、その「一歩」のための機会や仕組みを整える作業でしょう。

 お助け隊が浮かび上がらせた課題は、2千人を超える若者の経験をどう次につなげるかです。

 非営利活動などが専門の甲南大共通教育センターの岡村こず恵特任准教授は「持続可能性を考えると、NPO(民間非営利団体)や地域の市民団体に、若者を受け入れる力をもっと付けてもらいたい」と注文しています。それには、行政の支援も欠かせません。

 お助け隊で活動した神戸海星女子学院大の学生は「できることはサポートし、できないことはサポートしてもらう。これが当たり前の社会になればいい」と力を込めます。全世代が加わり、社会に助け合いのサイクルを築くことが求められます。

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