社説

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 安定的な皇位継承策を検討する政府の有識者会議は、皇族数の確保策を軸とする報告書をまとめた。

 本題だった女性・女系天皇の是非を含む継承策について「機が熟しておらず、かえって皇位継承を不安定化させる」として先送りした。

 皇室の先細りが懸案となって久しい。次世代の皇位継承者は秋篠宮家の長男悠仁さましかおらず、先月成人を迎えられた天皇陛下の長女愛子さまも、秋篠宮家の次女佳子さまも、昨年結婚した同家の長女眞子さんと同様、結婚すれば皇室を離れる。

 危機を直視せず、肝心の議論を避けた報告書には失望を禁じ得ない。

 代わりに示されたのは、女性皇族が結婚後も身分を保持する案と、皇統に属する男系男子を養子縁組して皇族とする案の二つである。

 いずれも皇室の活動を担う皇族数が若干増える策でしかなく、抜本的な解決には程遠い。見過ごせないのは憲法上の問題点である。

 女性皇族が結婚後も身分を維持する案では、配偶者や子どもは皇族としない方向だが、政治、経済、宗教の自由は保障されるのかといった課題が整理されていない。女性皇族に選択の自由を認めないのは人権侵害に当たらないかも懸念される。

 旧皇族の男系男子のみを対象とする養子縁組は、憲法が禁じる「門地(家柄)による差別」に該当する恐れがある。旧宮家といっても約600年前に天皇家と分かれ、血縁は遠い。その子孫がどこに何人いるかも明らかでない状況で、皇籍復帰に国民の支持が得られるだろうか。

 国会が求めた「女性宮家創設」の検討も先送りされた。

 背景には、女性・女系天皇につながる議論を徹底的に封じる保守派の意向があるとされる。夏の参院選を前に皇室問題が争点化されるのを警戒する政権の思惑も透ける。

 2005年に小泉内閣の有識者会議が女性・女系天皇を容認する報告書をまとめ、民主党政権でも女性宮家創設の検討を進めた。だが第2次安倍政権以降、議論は棚上げにされてきた。17年6月に成立した天皇退位特例法に伴う国会の付帯決議は速やかな検討と報告を求めたが、今回の答申まで4年半を費やした。

 皇室の現状を考えれば、これ以上の先延ばしは許されない。

 今後の議論の場は国会に移る。国会の決議に応えていない報告書を受け入れるか、問題点を追及するか、与野党の対応が問われる局面だ。

 男系男子による継承にこだわる限り、打開策は見えてこない。世論調査では女性・女系天皇を容認する意見が8割を超えた。「国民の総意」に基づき、安定的な皇位継承策の議論を急ぐ必要がある。

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