社説

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 安倍晋三元首相の後援会が「桜を見る会」前日に主催した夕食会の費用補填(ほてん)問題で、東京地検特捜部が、安倍氏について嫌疑不十分や時効の成立で再び不起訴とした。安倍氏は公選法違反容疑などで告発され、東京第1検察審査会が昨年7月、不起訴を「不当」と議決していた。

 夕食会に関する一連の捜査は事実上終結することになるが、国民の疑念は解消されたとは言い難い。

 不起訴について安倍氏は「厳正な捜査の結果、決定されたものと受け止めている」とのコメントを出したのみで、反省の弁を述べなかった。首相の立場にありながら深刻な政治不信を招いた責任の重大さを、安倍氏は改めて自覚すべきである。

 問題は、東京のホテルで開かれた夕食会の費用を巡るものだ。参加したのは安倍氏の地元・山口の支援者らで、1人5千円の会費だけでは賄えず安倍氏側が穴埋めした疑惑が浮上し、国会でも追及された。

 夕食会は2013~19年に毎年開かれ、19年までの5年間で支払総額は計約2300万円だった。会費収入との差額900万円余りは、安倍氏が代表の資金管理団体が補填したとされるが、後援会などの政治資金収支報告書に記載はなかった。

 特捜部は再捜査で、公選法と政治資金規正法違反の容疑の一部で時効が成立していると判断した。時効にかからない分に関しては「起訴するに足りる十分な証拠が得られなかった」と説明した。会費の穴埋めは、公選法で禁止される有権者への寄付行為に該当しないと結論付けた。

 当初の捜査で、特捜部は毎年400人以上いた夕食会参加者のうち20人超から聴取し「寄付を受けた認識がない」とした。これに対し、審査会は「一部の供述だけで判断するのは不十分」と批判していた。

 だが特捜部は、再捜査で聴取対象をどれほど広げたのかなどの詳細を明らかにしなかった。曖昧な説明では「結論ありきの捜査か」との不信はかえって深まりかねない。

 安倍氏の対応でとりわけ看過できないのは、国会で「補填した事実はない」などと事実に反する答弁を100回以上繰り返した点だ。

 その後、一転して答弁を訂正し謝罪した。しかし安倍氏は言い訳に終始し、ホテル発行の明細書なども公表していない。審査会は「首相だった者が、秘書がやったことだと言って関知しない姿勢は国民感情として納得できない」と断じている。

 安倍氏は首相辞任後、派閥の会長に就任して影響力を維持し、活動を活発化させている。政治の表舞台に立ち続ける以上は、審査会の指摘を真摯(しんし)に受け止め、説明責任を果たしてもらわねばならない。

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