社説

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 南太平洋にある島国のトンガ沖で15日昼、海底火山が噴火した。この影響とみられる津波が、約8千キロ離れた日本列島の太平洋沿岸に押し寄せた。国内では人命に関わる被害はなかったものの、地震による津波とは異なる未知の災害への対応力が問われた。今後の教訓とすべきだ。

 気象庁は当初、「若干の海面変動は予想されるが、被害の心配はない」と発表していた。ところが一転、同日夜になって各地で潮位の上昇が相次いだ。1メートルを超える津波を観測した鹿児島県の奄美群島・トカラ列島や岩手県に津波警報を、北海道から沖縄にかけての太平洋沿岸全域などに津波注意報を発令した。

 避難指示の対象は全国8県で、最大22万9千人を数えた。四国や九州、東北などでは漁船が転覆、流失する被害が確認された。

 気象庁は、記者会見では津波と明言せず、「噴火に伴う潮位変化」「メカニズムが分からない」と繰り返した。前例のない海面の異変をどう表現するか苦慮しつつ、避難の呼びかけを優先させた格好になった。

 発生メカニズムの特定が困難な段階で情報発信に混乱が生じたのを一概には批判できない。だが岩手県では1・1メートルの津波を観測後に注意報を警報に引き上げた。周知が難しい未明の発令となり、自治体の対応にも影響した。夜間の避難の遅れは人的被害の拡大に直結する。なぜ、警報・注意報の発表が遅れたのか。避難指示は住民らに適切に伝わったのか。事態を重く受け止め、津波対策の強化に生かさねばならない。

 専門家らは、噴火で発生した「空振」と呼ばれる衝撃波が潮位の変動を招いた可能性を指摘する。国内外の知見を結集して今回の現象を解明し、備えに万全を期してほしい。

 トンガの被害の全容はなお分かっておらず、各国が連携して情報を収集し、迅速な支援に努めたい。

 真冬の夜間、新型コロナウイルス禍における津波到来は、多くの課題を浮き彫りにした。15日深夜に1・2メートルの潮位変化を観測した奄美大島では、高台に避難しようとする車で渋滞が発生した。山間部は幅が狭い道路も多く、やむを得ない場合を除き車を使わない。多くの車が津波にのまれた東日本大震災の教訓だ。

 政府が昨年末に公表した、日本海溝・千島海溝沿いで巨大地震が起きた場合の被害想定では、冬の深夜が最も厳しく、北海道や東北などの太平洋沿岸で最大19万9千人が死亡するとした。避難所の防寒・感染対策や非常食の備蓄は万全なのか。政府や自治体は、今回の避難状況を検証するなどして課題を洗い出し、被害を最小限に抑えるための具体的な対策を急ぐ必要がある。

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