社説

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 建設受注統計の書き換え問題で、国土交通省と総務省がそれぞれの事務次官ら計17人を処分した。

 先に公表された第三者委員会の報告書などによると、国交省は、不適切な処理に気づいて公表を進言した職員の声を黙殺するなど隠蔽(いんぺい)と受け止められても仕方ない対応をしていた。統計法を所管する総務省は、国交省から二重計上の情報提供があったのに公表を求めなかった。

 発覚を恐れ、隠蔽と責任回避に奔走する官僚たちの姿は、厚生労働省の毎月勤労統計の不正や、森友学園を巡る財務省の決裁文書改ざんと重なる。反省もなく、行政への信頼をさらに失墜させた責任は重い。

 報告書は、決着を急ぐ岸田政権の意向を受け、わずか3週間でまとめられた。長期的な書き換えが政策判断にどう影響したのか、他の統計は大丈夫か。多くの疑問点に踏み込んでおらず、全容解明には程遠い。

 不十分な調査と形ばかりの処分で幕引きしてはならない。官僚組織のうみを出し、再発防止策を示す。岸田文雄首相は国民の信頼を取り戻すために指導力を発揮すべきだ。

 建設受注統計は、53ある国の基幹統計の一つで、国内総生産(GDP)の算出や、中小企業支援の政策判断などにも使われる。公表数値の誤りは、国の政策判断や経済活動、国民生活にも影響する。

 国交省は、業者から調査票を回収する都道府県に指示するなどして、提出が遅れた過去月の受注額を提出月に合算する書き換えを20年以上続けていた。より深刻なのは、2013年4月の推計方法変更で生じた二重計上が見過ごされた点である。

 GDPの上積みを掲げた当時の安倍政権への忖度(そんたく)も疑われたが、報告書は過大な数字を作為的に計上する意図は確認できなかったとした。

 変更は統計精度の向上が目的だったとされる。にもかかわらず、実態とずれた合算をやめず、数値が過大になる二重計上を見落としたのは不自然ではないか。

 厚労省の不正を受けた一斉点検や会計検査院の指摘など19年にも是正の機会はあったが、国交省は改めず、昨年の推計方法見直しに紛れ込ませてごまかそうとするなど悪質だ。

 報告書は要因として、慢性的な人員不足で業務を見直す余裕がなく、管理職の任期が短く「隠蔽してやり過ごす動機になる」と指摘した。統計業務を軽視する政府の姿勢がもたらした構造的な問題と言える。

 07年に全面改正された統計法は、「行政のための統計」から「国民が広く利用する公共財としての統計」へと理念を大きく転換した。全省庁の職員が肝に銘じ、不正を許さない決意を新たにしなければならない。

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