社説

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 経団連と連合のトップが意見を交わす「労使フォーラム」が開かれ、2022年春闘が事実上始まった。コロナ禍が長引き、企業の業績は業種や規模により大きなばらつきがある。厳しい労使交渉が予想される。

 日本の賃金上昇の鈍さは先進国の中で際立ち、春闘による賃上げ率もここ数年伸び悩んでいる。コロナ禍により賃上げの重要性は例年にも増して高い。景気浮揚の「基盤」となる暮らしを支え、安心感につながるよう労使は議論を深めてほしい。

 日本の経済が直面する大きな懸念材料は、世界に広がるインフレだ。国内でも原料高や円安による輸入コスト増を背景に、光熱費や身近な食料品が値上がりしている。日銀は22年度の消費者物価が前年より1・1%上がるとの見通しを示した。

 賃上げを伴わない物価上昇が続けば、家計への打撃は避けられない。原料費などの増加分を販売価格に転嫁できないなら、企業にとっても収益悪化の原因となる。付加価値を高めるための投資も停滞し、経済の悪循環から抜け出せなくなる。

 目指すべきは、持続的な賃上げに伴って物価が緩やかに上昇する好循環である。好業績の企業は積極的な賃上げに応じてもらいたい。

 連合はベースアップ(ベア)と定期昇給を合わせて、4%程度の賃上げを要求している。対する経団連も「ベアを含めた『新しい資本主義』の起動にふさわしい賃上げが望まれる」と春闘の指針に明記した。賃上げによる「分配」を経済界に強く求める岸田文雄首相への配慮をにじませたと言える。

 ただ、一律の引き上げには否定的だ。業績が振るわない企業については事業継続と雇用維持を最優先し、複数年度にわたってベアの方向性を出すことを提案している。

 働き手への労働分配率は、一部の業種を除き歴史的な低水準にある。非正規雇用の増加が一因だ。一方、上場企業の「内部留保」は20年度に484兆円と、過去最高規模に膨らんでいる。収益をもっと労働者に還元する必要がある。

 女性や高齢者など非正規で働く人の処遇改善も欠かせない。デジタル化や脱炭素への対応が進む中、人への投資を怠れば成長は望めない。

 地域経済の重要な担い手である中小企業に、賃上げの流れをどう波及させるかも焦点となる。経団連は下請けなどが不利にならないよう、取引価格の適正化に取り組むことを春闘指針に初めて盛り込んだ。

 企業間の格差を是正するには、大企業が率先して動くべきだ。政府も中小企業への不当なしわ寄せを防ぐ実効性のある対策を打ち出し、着実に進めねばならない。

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