診療報酬改定/有事も頼れる医療実現を

2022/02/18 06:00

 治療や投薬など医療サービスの対価として、医療機関や薬局などに支払われる診療報酬の改定内容が決まった。4月から実施される。 関連ニュース <IT市役所>(5)レセプト確認 ミス点検 自動化で時短 診療報酬改定/医師負担減を質の向上に  AIで作業効率アップ レセプト情報のミス点検

 見直しは2年に1度で、新型コロナウイルスの感染拡大が起きてからは初めてとなる。
 コロナ禍では、医療体制の脆弱(ぜいじゃく)さが浮き彫りになり、国民に不安が広がった。今後、新たな感染症の発生も予想される。限りある医療資源を有効に活用し、有事にも安心できる地域医療の構築が欠かせない。
 改定率は2021年末の予算編成で、医師らの人件費や技術料に当たる本体部分を0・43%引き上げる一方、薬などの薬価部分は1・37%引き下げ、全体で0・94%のマイナス改定となることが決まっていた。
 改定の柱の一つが、新型コロナウイルスなど感染症対策の強化だ。
 感染症の発生に備えて普段から施設の感染対策を実施している診療所に報酬を加算する。感染症の流行時に発熱外来を開く用意があると、ホームページなどで公表することなどが加算の要件となる。
 医療機関の多くを民間病院が占める。だが人員や病床が足りず、感染対策が難しいとして、コロナ患者の受け入れに慎重な病院が少なくない。このため大病院に負担が集中し、医療逼迫(ひっぱく)の要因ともなってきた。
 厚生労働省によると、発熱外来として登録する医療機関は、全国に約3万5千あるが、そのうち約3割は施設名の公表に応じていない。
 今回の改定は開業医や中小病院にもコロナの診療に携わるよう強く促す狙いがある。感染症が疑われる患者にとって、身近な診療所は最初に頼りたい場所だ。地域医療の担い手は改定の意図を理解し、患者の不安と向き合う医療を心掛けてほしい。
 一方、基幹病院は、地域の中小病院や診療所と合同で感染症対策訓練などをすると報酬が増額される。平時から役割分担を明確にし、連携強化を進めることで、有事に対応できる病院や診療所を増やしていく必要がある。発熱外来の開設を、かかりつけ医を選ぶ際の指標にするなど、受診する側も後押ししたい。
 コロナ対応の特例で解禁されたオンラインでの初診は恒久化する。報酬も拡充されるが、対応できる医療機関は21年6月時点で全体の6%と少ない。対面に比べて診断の難しさなどが普及が遅れる一因とされてきた。患者の利便性を高めつつ、診療の質の確保にも努めねばならない。
 このほか、不妊治療における公的保険の適用拡大も決まった。子どもを望む夫婦やカップルの経済的負担の軽減とともに、治療に取り組みやすい環境づくりへ、自治体や企業による支援の充実も求めたい。

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