社説

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 乗客106人と運転士が死亡し、493人が重軽傷(神戸地検調べ)を負った尼崎JR脱線事故から、きょうで17年になる。JR西日本は、新型コロナウイルスの感染拡大で中止していた慰霊式を、3年ぶりに事故現場の追悼施設「祈りの杜(もり)」で開く。あらためて公共交通の安全を誓う日にしなければならない。

 事故の風化を防ぐため、記憶の継承が課題となっている。JR西は、大阪府吹田市の社員研修センター内の新施設で事故車両の保存を予定する。損傷が激しく復元困難な1~4両目は部品に裁断し、原形をとどめる5~7両目はそのまま残す方針を決めた。展示方法などへの関係者の思いはさまざまだ。今後も遺族の声に耳を傾ける努力が欠かせない。

 事故の責任を巡っては、安全対策を担った元社長が起訴され、歴代3社長も強制起訴されたが、全員無罪となった。遺族らは企業の刑事責任を問える「組織罰」の創設を求めている。組織罰は事故調査を妨げるとの意見もあり、議論が分かれる。

 神戸地裁の裁判長として3社長に無罪を言い渡し、今年1月に大阪地裁所長に着任した宮崎英一氏は、就任会見で「遺族が求めているものと刑事裁判の間にギャップがあった」と述べた。そのギャップを埋める議論と努力を、法曹と政治の世界でぜひ重ねてもらいたい。

 脱線事故は人為ミスだけが原因ではない。今年3月、最大震度6強を観測した地震で、宮城県白石市を走行していた東北新幹線の列車17両中16両が脱線した。車軸部分に装着したL字形の金具「逸脱防止ガイド」が線路に引っかかり深刻な事態は防げたが、一歩間違えば大惨事につながった。脱線は必ず起きるという前提で安全対策を進める必要がある。

 尼崎の事故では、ミスに厳しいJR西の企業風土も問題視された。運転士は事故前に駅でオーバーランを起こし、無線で報告する車掌のやりとりに気を取られ、減速が遅れたとされる。JR西は2016年4月、事故やミスで遅延しても社員を処分しない「非懲戒」制度を導入した。

 ところがその趣旨に反する事案があったと、今月19日の判決で岡山地裁が認定した。20年6月、JR岡山駅で回送列車の出発を1分間遅延させた男性運転士が、遅れた分の賃金を減額された。運転士は直ちに連絡するなどの措置を取っており、同地裁は減給を不当と判断した。

 減額分はわずかとはいえ、懲罰的な意味合いは明らかだ。JR西の体質は変わっていないと批判されても仕方がない。人間はミスを起こす。そのために備える。事故の教訓を無駄にしないため、もう一度襟を正して企業風土を検証し直すべきだ。

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