社説

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 フランスの大統領選は今回も決選投票となり、中道の現職エマニュエル・マクロン大統領が極右政党、国民連合のマリーヌ・ルペン氏を破って再選を決めた。

 ロシアのウクライナ侵攻に西欧諸国が結束して向き合う中、ロシアとの関係改善を掲げるルペン氏が敗退し、懸念された欧州連合(EU)内の足並みの乱れは回避された。現政権の外交姿勢は維持され、国民は安定と継続を選択したと言える。

 ただ得票率は、マクロン氏が約59%、ルペン氏が約41%と、2人が争った前回2017年の約66%、約34%よりも差が縮小した。マクロン政権への国民の不満が浮き彫りになったとみることもできる。

 開いた民意との乖離(かいり)をどう埋めるか。マクロン氏は自らの政権運営を謙虚に見直さねばならない。

 今回の結果は現職の完勝と受け取れない。「極右政権だけは避けたい」という消極的支持にも後押しされたとみるべきだろう。

 実際、ルペン氏支持は広がりを見せた。前回は約100県のうちマクロン氏に勝ったのは2県にすぎなかったが、今回は30県に増えた。

 背景には格差拡大とコロナ禍での生活困窮がある。統計上、国の経済は上向き、失業者は減っているが、マクロン政権の政策を「金持ち優先」と批判する国民は少なくない。

 フランス公共ラジオの世論調査でも、高所得層は多くがマクロン氏を支持したが、所得の低い層ではルペン氏支持が優勢だった。

 過去5年、燃料価格高騰などに抗議するデモが吹き荒れた。「取り残された」と感じた庶民の怒りに、マクロン氏は向き合うべきだ。

 一方、ルペン氏も「反移民」など人種差別的な発言を繰り返し、物議を醸してきた。ロシアへの制裁強化に反対する主張を疑問視する人も少なくない。それらへの警戒心が「反ルペン票」となった。

 歯切れのよい過激な思想が、やり場のない不満のはけ口になる。そうした現状を放置すれば、国民の間の分断や政治離れは深刻になる。

 マクロン氏自身、「極右に投票した人々の怒りに対する答えを見いださなければならない」と述べている。それには国民を守る政策を実行し、信頼を回復するしかない。

 与野党を含めた既成政党、政治への根深い失望が、力強く「改革」を叫ぶ新たな政治勢力の追い風になる。世界的に見られる動きだが、民主政治の実現に近道はないことを、今回の選挙は改めて示した。

 誰も切り捨てず、異論に耳を傾け、地道に合意形成を目指す。マクロン氏が突き付けられた2期目の課題は、日本の政治の課題でもある。

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