社説

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 政府は、燃料や穀物などの物価高騰に対応する総額約6兆2千億円の「総合緊急対策」をまとめた。原油高対策、食料や原材料の安定供給、中小企業支援、生活困窮者支援の4本柱からなる。

 岸田文雄首相は記者会見で、「原油価格、物価高騰が社会経済活動の復活の妨げになることを防がなければならない」と強調した。

 新型コロナウイルス禍で痛手を負った経済活動にウクライナ危機が追い打ちをかけ、さらに円安による輸入コスト増が価格を押し上げる。困窮者らを支える必要性は理解できるが、歳出規模は大きく膨らんだ。一連の対策は、夏の参院選をにらんだ「ばらまき」との疑念が拭えない。

 対策の目玉となる原油高対策は石油元売り会社への補助金を拡充し、9月まで延長する。上限を1リットル25円から35円に引き上げ、全国平均小売価格を172円から168円に値下げを図る。対応する費用として約1兆5千億円を投じる。現行の補助制度でも価格は高止まりしており、抑制効果の検証が欠かせない。

 一方、焦点となった「トリガー条項」の発動は先送りされた。ガソリン税の一部を減税する仕組みだが、東日本大震災の復興財源確保のために現在は凍結されている。ただ今回の拡充で、補助金による値下げ幅はトリガー条項の発動による減額幅を上回る規模となる。国の関与が常態化すれば、市場原理をゆがめることにもなりかねない。

 柱の一つである困窮者支援では、低所得世帯の子ども1人に5万円を支給する。だが子どもがいない世帯や1人暮らしでも生活が苦しい人は多い。対象の範囲や額の根拠について首相の説明は十分とは言えない。コロナ禍以降、政府は経済政策を策定するたびに国民に現金を配ってきた。費用対効果と公平性を吟味する必要がある。

 政府は、緊急対策の財源の一部に予備費から1兆5千億円を充てる。今回支出した予備費を、今後編成する補正予算案で穴埋めする「奇策」である。併せて、コロナ禍対策で計上されていた予備費の使用目的を物価高騰対策にも広げるという。

 予備費は内閣の裁量で使途を決められるため、監視の目も甘くなる。政権の都合に合わせた積み増しや安易な使途拡大は予備費の乱用と言わざるを得ない。見過ごせば、国会の議決を経て予算を執行する財政民主主義を骨抜きにし、財政規律の緩みを助長するばかりだ。国会で徹底的に追及しなければならない。

 物価高騰は円安の要因も見逃せない。その場しのぎではなく、金融・経済政策や、大幅な賃上げを含む抜本的な改革に取り組むべきだ。

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