社説

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 今まさに起きている戦争を、子どもたちにどう伝えればいいか。ロシアがウクライナへの侵攻を始めてから、そんな思いを抱く人は少なくないようだ。

 例えばあなたが中学生に次のように問われたら、何と答えるだろう。なぜ戦争を回避できなかったのか、どうすれば終わらせられるか、日本にいる自分たちが戦争終結に向けてできることは何か-。

 過去の紛争と異なり、ウクライナの惨状は交流サイト(SNS)で即座に世界中に発信される。大人が思う以上に、さまざまな形で情報に接している子どもは多い。

 きょうは「こどもの日」。戦争や平和について、子どもと対話する際のヒントを探りたい。

    ◇

 3月、西宮市立浜脇中学2年の女子生徒が、社会科の授業で書いた文章を紹介しよう。ウクライナの人たちへのメッセージという。

 「私の中で戦争は昔というイメージしかありませんでした。調べて分かったのは、戦争は昔だけでなく今もあるということ。私が勝手に平和だと思っていた世界は実際、あまり平和ではなかったこと。早く平和な世界になることを願っています」

 浜脇中学は普段から新聞を活用し、生徒が時事問題に触れている。2月以降、ウクライナ情勢の記事が増えるにつれて生徒の関心も高まり、侵攻開始後すぐに2年生の授業で取り上げた。西村哲教諭は「『悲しい』『戦争はだめ』という感想で終わらずに、学んだ知識や得た情報を基に、できるだけ多角的に自分で考えることを重視した」と話す。

「自分なら」の視点

 初回の授業はウクライナとロシアの歴史や地理を、2回目は東西冷戦などの過去の紛争を学び、仕上げとなる3回目で、生徒が自身で選んだ相手にメッセージを書いた。

 ロシアで戦争に反対している人に向けて「勇気があって強い人だと思います。ロシア人全員に偏見を持つのはおかしい」と女子生徒。岸田文雄首相に宛てて「簡単ではないと思いますが、ウクライナ避難民の受け入れを増やしてほしい。浜脇中学では受け入れの準備はできています」とつづった男子生徒もいた。

 ロシアの侵攻開始から2カ月以上が経過しても、国際社会は戦争終結の端緒すらつくりだせずにいる。平和教育で広島、長崎への原爆投下など戦争の体験と教訓を学んできた日本の子どもたちが「どうして過ちを繰り返すのか」と疑問を抱くのは自然なことといえる。

 そうした「なぜ」に即答するのは難しい。教育現場で子どもたちと向き合う教員らは「正解がない問題を、『自分ならどうするか』という視点で考え続けることが大事」と実感しているという。それは大人にとっても同じだろう。

拡散するフェイク

 尼崎市立南武庫之荘中学でも4月、3年生の授業でウクライナを取り上げた。外部講師を招き、有事における情報リテラシー(読解力)について生徒同士で話し合った。

 ウクライナのゼレンスキー大統領が国外逃亡したとのデマがSNSに流れ、本人が自ら動画でそれを打ち消すなど、サイバー空間が「もうひとつの戦場」と化している。

 フェイクニュースが大量に出回る中、何が信頼できる情報なのかをつかむには、偏らない収集方法や、批判的に読み解く力が一層求められる。南武庫之荘中学の生徒の一人は「SNSに限らず、新聞やテレビも複数を見比べることが重要だと思った」と授業の感想を述べていた。

 日本ユニセフ協会(東京)は、ホームページに親へのアドバイスを載せている。戦争のニュースで子どもが感じる不安を否定せず、差別や偏見ではなく、故郷を追われた人への思いやりなどを促す機会にしてほしいと呼びかける。

 戦争終結のために何ができるのか。世界中の大人に向けた、子どもたちの問いである。受け止めるには、私たち大人が今の状況に慣れてしまってはいけない。

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