社説

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 ロシアによるウクライナ侵攻で、国連の存在が揺らいでいる。安全保障理事会の常任理事国として重責を担うロシアが、国連憲章や国際法に違反する「侵略」や「虐殺」の責任を追及されているためだ。

 国連安保理が非難決議をすれば法的拘束力が生じる。だが、常任理事国5カ国は拒否権を持つ。ウクライナ侵攻に関するロシアへの非難決議は、当事国であるロシアが拒否権を行使して廃案になった。

 代わって国連総会が緊急特別会合を開き、141カ国の賛成で即時撤退などをロシアに求める決議を採択したが、ロシアは受け入れない。民間人虐殺が疑われる惨状が明らかになっても戦闘を止められず、「機能不全」が指摘されている。

 とはいえ、国連は平和と安定を維持する最大のよりどころだ。国際社会の秩序を取り戻すため、加盟国が知恵を出し合わねばならない。

 軍事侵攻から2カ月が過ぎても、ロシアとウクライナの停戦協議は進まない。南東部マリウポリでは、製鉄所内に逃れた約千人の民間人などの被害が懸念される状況だ。

 事態を打開するため、国連のグテレス事務総長が先日、ロシアのプーチン大統領、ウクライナのゼレンスキー大統領と相次ぎ会談した。プーチン氏は停戦交渉を継続する意向を示し、製鉄所からの市民退避に国連と赤十字国際委員会が関与することで原則合意して、退避が始まった。ゼレンスキー氏も国連の働き掛けに一定の期待を示したとされる。

 しかし、ロシアは会談の直後にウクライナの首都キーウ(キエフ)にミサイルを撃ち込み、国連の仲介の動きに水を差した。グテレス氏は肝心の停戦の議論に踏み込めず、ロシアの動きに翻弄(ほんろう)された形である。

 ただ、ロシアが国境沿いに軍を展開した早期の段階から、国連は武力衝突回避を呼び掛け続けた。侵攻後は人道問題調整室や難民高等弁務官事務所をはじめとする関係機関が避難民支援などを展開している。

 安保理決議が前提となる国連軍派遣などの強制措置が取れない中、合意形成を目指す平和解決の模索を続けるのが、国連の役割と言える。

 国連の出発点には、日本などの国際連盟脱退で国際社会が分裂し、第2次大戦を防げなかった苦い教訓がある。国連総会では、日本などが賛同して常任理事国の拒否権行使に総会での理由説明を求める決議を採択した。大国の拒否権行使に歯止めをかける取り組みが一歩前進した。

 機能不全を露呈する一方で改革の動きも続く。国連憲章がうたう平和と安全に向けた「努力の結集」を継続し、全ての加盟国が連携して課題を克服することが重要だ。

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