社説

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 ウクライナに対するロシアの軍事侵攻では、多数の民間人殺害が明るみに出た。学校や病院への爆撃も繰り返されている。ロシア軍による意図的な行為とすれば非人道的と言うしかなく、強い非難に値する。

 ウクライナ側は、キーウ(キエフ)近郊のブチャなどでジェノサイド(大量虐殺)や拷問、性的暴行が行われているとし、ロシアによる「戦争犯罪」の責任追及を求める。

 一方、ロシア側は「ウクライナの捏造(ねつぞう)だ」と反論している。

 両者の主張が対立する以上、公平な裁きが必要だ。注目されるのが、国際刑事裁判所(ICC)による捜査である。1CCは欧州連合(EU)とも連携し、既にウクライナでの活動を始めた。ブチャを訪れた主任検察官は「ウクライナは犯罪現場だ」との認識を示した。

 捜査で真相が明らかになれば、非人道的な行為の抑止につながる。歴史の歪曲(わいきょく)を許さない意味も大きい。1CCの存在意義をかけて戦争犯罪の解明を進めねばならない。

 1CCは戦争犯罪などに関わった個人を裁く常設の国際刑事法廷で、1998年の国際会議で設置が決まり、2003年にオランダ・ハーグに置かれた。設立条約の採択は困難とされる中、予想に反して多くの支持を集めた。現在120を超える国と地域が加盟している。国のトップも訴追でき、09年にはスーダンでの集団虐殺に関与したとしてバシル大統領に逮捕状を出した。

 ただ限界も指摘される。一つは被告の出席が裁判の原則である点だ。プーチン大統領が訴追されたとしても身柄確保は難しく、処罰を受ける可能性は低い。また証拠収集の厳格さが求められ、捜査に長い期間を要するのも課題だ。公判が開かれるまでに20年近くかかった事例もある。

 ロシアを含む大国が1CCに加盟していない点も捜査の壁になる。ロシアは「政治的に偏っており、独立した司法機関ではない」として、捜査に協力しない意向を示した。

 米国も当初は設立に賛同しながらその後撤回した。トランプ大統領の時代には、アフガニスタン戦争を巡る米兵への捜査を拒否するなど、妨害を繰り返した。ウクライナ侵攻では協力姿勢を見せるが、自国の都合で態度を変えるようでは、大国の責任を果たしているとは言えない。

 ほかにも中国やインドなどが未加盟である。国際社会が連携して大国の加盟を粘り強く促し、ICCの実効性を高める機会とすべきだ。

 日本の加盟も07年と出遅れたが、現在は分担金の最大拠出国であり、専門家を判事として送り出している。国際正義の実現に向け、主導的な役割を果たしてもらいたい。

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