社説

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 ウクライナに対する一方的な軍事侵攻を機に、欧州ではロシアを警戒する動きが強まっている。長く中立政策を取ってきた北欧のフィンランドとスウェーデンが軍事同盟の北大西洋条約機構(NATO)に加盟申請したのは、自国の安全保障に深刻な危惧を抱いたためだ。

 国際法や国連憲章を無視した今回の軍事行動を多くの国が脅威と捉え、ロシアは孤立を深めている。自分たちが招いた結果を、プーチン政権は重く受け止める必要がある。

 しかしロシアは逆に両国の対応を批判し、天然ガスの供給停止など報復的な行動に出た。これでは国際社会の包囲網が広がり、ロシアが失うものも大きくなるだろう。軍を全面撤収し、不毛な戦争を自らの手で終わりにすべきだ。

 もともと北欧とロシアには複雑な歴史がある。バルト海一帯の帝国だったスウェーデンはフィンランドも領有したが、19世紀のナポレオン戦争期にロシアに明け渡し、軍事非同盟と戦争不参加を国是とした。

 一方、約1300キロにわたる国境をロシアと接するフィンランドは、1917年のロシア革命を機に独立を宣言した。旧ソ連と戦火を交えたが、第2次大戦後に友好協力相互援助条約を結んで争いを回避した。

 フィンランド、スウェーデンともNATOに加盟せず、東西冷戦期も中立を維持した。その基本政策を転換したのは、近隣国であるロシアの暴挙に危険を感じたためとされる。

 スウェーデンのアンデション首相は「新たな時代に入った」と語ったが、非同盟政策を誇りとする国民には苦渋の選択だったに違いない。

 両国はロシアに比べれば小さな国だが、近代化された軍隊を備え、特にスウェーデンは世界有数の武器輸出国でもある。NATOとの境界線が一気に拡大する展開は、ロシアも予想していなかっただろう。

 ただ、NATOへの正式加盟には全加盟30カ国の同意が必要となる。自国のクルド勢力による非合法組織を両国が支援しているとしてトルコが難色を示しており、米国を交えての協議は時間がかかりそうだ。

 その間にロシアが両国への軍事行動に踏み切るとの見方があり、英国やドイツ、他の北欧諸国などは有事の際の軍事支援を表明した。欧州での新たな武力衝突につながる事態は避けねばならない。

 NATOの集団防衛に抑止力が期待できるのは確かだろう。だが軍事対立の構図が固定化すれば、かえって平和と安定が遠のく側面もある。戦争を回避するには外交による緊張緩和の努力が欠かせない。軍事力の均衡だけに頼る危うさを、ウクライナ危機は浮き彫りにしている。

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