社説

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 昨年7月に静岡県熱海市で起きた大規模土石流災害を巡り、県と市の対応を検証する県の第三者委員会が最終報告書を公表した。崩落起点の土地で不適切な盛り土の造成に関わったとされる現旧所有者への対応について、「失敗」と結論づけた。

 関連死を含め27人が死亡し、1人が行方不明となっている。「人災」の責任の一端が行政にあると認めた形だ。報告書は、不適切な初動対応など「縦割り行政」の弊害にも言及した。国や自治体は教訓を共有し、今後の対策に生かさねばならない。

 なぜ、危険な盛り土が放置されたのか。崩落起点では、旧所有者が2007年の届け出直後から計画を超える土砂などを搬入し、市が再三指導しても是正されなかった。第三者委は、この時点で県と市が「問題業者」との認識を共有すべきだったとし、双方の当事者意識の低さが被害拡大の一因になったと認定した。

 市は、土砂崩落の危険があるとして、09年と11年に県土採取等規制条例に基づく是正措置命令を検討したが、最終的に見送っていた。市は発令について「県と相談していた」と説明した。一方、県は「詳細は承知していない」とし、発令の見送りは市の判断だったと主張した。

 対立の背景の一つには、条例の運用があった。開発行為の届け先は通常は県だが、面積1ヘクタール未満の場合は市になり、措置命令も市が出す。当初の届け出は1ヘクタール未満だったものの、市の指導で業者が測量をやり直すと1ヘクタールを超えた。しかし県は「図面に信ぴょう性がない」との理由を付けて市に押し返したという。

 どちらが対応するか曖昧なまま、土地は11年に現在の所有者に売却された。県の担当者の危機意識は人事異動に伴って薄れ、その後も特段の安全対策が実施されない状態が続き、災害の発生に至った。

 県と市が盛り土崩落の危険性を共有し、適切に対処していれば、甚大な被害は防げたのではないか。犠牲者遺族が「行政の不作為で多くの人命が失われた。猛省し、二度と悲劇が起こらないようにしてほしい」と批判したのは当然だろう。

 土砂災害の要因となる危険な盛り土は全国に点在する。国が実施した総点検では1089カ所で無許可などの不備が確認され、その半数近くで必要な災害防止措置が確認できなかった。豪雨は年々激しさを増しており、早急な対応が求められる。

 宅地造成等規制法を改正し、きのうの国会で成立した盛り土規制法は土地の用途を問わず盛り土全般を規制し、無許可造成や是正命令違反への罰則強化も盛り込んだ。国や自治体は強い危機感を持って実効性のある再発防止策を講じるべきだ。

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