社説

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 芦屋市在住の海洋冒険家、堀江謙一さんが、小型ヨットによる単独無寄港の太平洋横断に成功し、母港の新西宮ヨットハーバーに無事到着した。83歳での達成は世界最高齢記録という。誰にもなし得なかった快挙であり、驚嘆に値する。

 最初に太平洋を単独無寄港横断したのは1962年だった。著書「太平洋ひとりぼっち」で知られる、その冒険から今年で60年になる。

 単独無寄港の世界一周や、ソーラーボートでの単独太平洋横断、足こぎボートでのハワイ-沖縄の横断など数々の冒険を成功させてきた堀江さんが、節目の年に打ち立てた新たな偉業に拍手を送りたい。

 使用したヨット「サントリーマーメイド3号」は全長約6メートル、重さ約1トンで本当に小さい。直近の航海から10年以上が過ぎ、冒険家の心を再びかき立てたのは、最高齢で「世界一広い海を小さいヨットで渡る」というシンプルな目標だった。

 堀江さんは帰港後の記者会見で、「夢を夢で終わらせず、現実の目的として挑戦した。無事終えられ、大きな喜び」と語り、「精神と肉体の完全燃焼を成し遂げた。青春真っただ中です」と満ち足りた表情を見せた。衰えを知らない挑戦への意欲と実行力に学ぶべきことは多い。

 約8500キロに及ぶ今回の太平洋横断は、日本から米国に渡った60年前とは逆向きで、大航海時代に帆船が通ったルートだという。3月27日に米サンフランシスコを出発し、69日間かけて西宮に着いた。6月上旬のゴールは目標通りで、大ベテランの航海術に感服させられる。

 日程は順調だったが、航海は決して容易ではなかったようだ。堀江さんと本紙とのメール通信によると、「安定した東の風が吹いています」「漆黒の海面いっぱいに星空が映ります。息をのむ景色」という日があれば「風と波が強く、まるで暴れ馬に乗っているよう」「スコールのでっかいのが何個も来て大変でした」という厳しい試練もあった。

 ただ、堀江さんは出航前に「嵐を乗り越えるごとに強くなる自分が分かる」とし、嵐の後に見る夕日が一段ときれいで、一杯のコーヒーがよりおいしいと話していた。今回も格別の時間を味わったことだろう。苦難と充足を繰り返す過程は、まさに人生そのものである。

 目標に向かう以上に楽しいことはないという堀江さんの生き方は、日々を充実させるお手本になる。

 出発地のサンフランシスコでは、聴衆を前に「100歳になっても船に乗っていたい」と語った。堀江さんなら達成できるだろう。今後も新たな目標に挑み、生涯現役の勇姿をぜひ世界に見せてほしい。

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