社説

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 政府は、経済財政運営の指針である「骨太の方針」と、その中核となる「新しい資本主義」の実行計画を閣議決定した。

 岸田文雄首相は「投資と大胆な改革で成長と分配の好循環を実現する」と語る。それには強力なリーダーシップが不可欠だが、骨太方針と実行計画からは、首相の覚悟も明確なビジョンも伝わってこない。

 成長戦略はアベノミクスの焼き直しが目立ち、政権が金看板とする分配政策への踏み込みは不十分だ。国と地方の借金が計1200兆円超に膨らんでいるにもかかわらず、財政健全化の目標を後退させた。そればかりか、防衛力の「5年以内の抜本的な強化」を新たに打ち出した。

 少子化が国の推計を上回るスピードで進んでいる。次世代につけを回さず、成長と安心を両立させる政策を推し進めねばならない。

 新しい資本主義の実行計画は、重点投資の4本柱に「人」「科学技術・イノベーション(技術革新)」「スタートアップ(新興企業)」「脱炭素・デジタル化」を挙げた。個別策として、非正規雇用を含む100万人の能力開発、創業支援、脱炭素化により経済社会の変革を目指すGX(グリーントランスフォーメーション)などを列挙した。

 成長分野への投資を促し、競争力を高める方策は重要である。しかし目新しさに乏しく、財源の確保策や政策の実現に必要な制度改革をどう進めるのかもはっきりしない。言葉だけが躍っている印象だ。

 新自由主義的な政策から転換し、格差是正や分配に力点を置くとした「岸田カラー」は色あせた。

 富裕層を念頭に置いた資産所得への課税強化は早々に棚上げし、実行計画に「資産所得倍増プラン」を盛り込んだ。貯蓄から投資への移行を促すのが目的だ。これも分配策と位置付けるが、恩恵を受ける層は限られ、格差をさらに広げかねない。

 物価高騰が家計を圧迫する中、着実な賃上げを実現させる政策にこそ重点を置くべきだ。性別や年齢にかかわらず、能力を発揮し、働き続けられる環境整備も欠かせない。

 今回の骨太方針では、政府が基礎的財政収支(プライマリーバランス)の黒字化を達成する目標に掲げてきた「2025年度」が明記されなかった。安倍晋三元首相ら積極財政派の圧力に抗しきれなかったためである。財政規律は骨抜きにされ、国民の将来不安は高まるばかりだ。

 参院選を控え、防衛費や経済対策などの増額圧力はいっそう強まるだろう。首相に求められるのは、党内有力者の声を「聞く力」ではなく、国民の不安解消に向けた具体的な構想と指導力である。

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