社説

  • 印刷

 東京都が、首都直下地震の被害想定を10年ぶりに見直した。

 都心南部を震源とするマグニチュード7・3の地震が起きた場合の被害が最も大きく、23区の6割が震度6強以上の揺れに見舞われる。死者約6100人、負傷者約9万3400人、全壊・焼失する建物は約19万4千棟に上ると見込む。

 2012年に公表した前回の想定よりも死者数が約4割、全壊棟数は約3割減少した。火災に弱い木造住宅密集地の解消や住宅の耐震化が進んだ効果だ。それでも死者数は27年前の阪神・淡路大震災に匹敵する。対策を着実に進めれば、被害をさらに減らせる余地はあるという。身の回りの備えを再点検し、継続して取り組むことが求められる。

 今回の被害想定は、社会情勢の変化を踏まえ、建物被害や死者・負傷者数などの「数値」に加え、起こり得る被害を時系列で示す「災害シナリオ」が初めて示された。

 都内で約3500棟あるというタワーマンションなどの高層ビルは、倒壊の恐れがなくても停電でエレベーターが止まり住民が閉じ込められ、負傷者の早期救出が困難になる。停電が解消せずに在宅避難が長引けば、水や食料の備蓄が枯渇し、避難所に移る人が増える恐れもある。

 また高齢者の一人暮らしが増えており、避難生活の長期化に伴う震災関連死に留意が必要となる。自治体は住民と連携して地域の防災力を向上させ、高齢者ら「災害弱者」の命を守るきめ細かい対策を事前に検討しておくことが欠かせない。

 一方、大量に発生する帰宅困難者への対応も課題となる。在宅勤務の普及があるとはいえ、今回の想定でも453万人を数える。うち買い物客ら行き場を失う帰宅困難者を66万人と算定する。都は、行政や企業などが開設する「一時滞在施設」を増やそうとしているが、確保できたのは約44万人分にとどまる。

 路上に人々があふれると消火や救助に支障が出る。延焼や余震による二次災害に巻き込まれる危険も高まる。帰宅を急がず勤務先で滞在するなど冷静な行動を徹底したい。

 首都直下地震は30年以内に70%の確率で起きると予想されている。被害は東京だけでなく、埼玉、千葉、神奈川県など首都圏全体に及ぶ。都心に集まる政府の中枢や企業の本社が機能不全に陥る可能性が高い。

 東京一極集中こそが最大のリスクである。阪神・淡路の教訓も踏まえ、その弊害が繰り返し指摘されてきたが、東日本大震災を経ても流れは止まらなかった。地震はいつ起きてもおかしくない。政府は首都機能の分散など是正に向けた根本的な防災・減災対策の議論を急ぐべきだ。

社説の最新
もっと見る
 

天気(8月17日)

  • 31℃
  • ---℃
  • 60%

  • 29℃
  • ---℃
  • 70%

  • 32℃
  • ---℃
  • 60%

  • 31℃
  • ---℃
  • 80%

お知らせ