社説

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 宇宙航空研究開発機構(JAXA)の探査機「はやぶさ2」が2020年に持ち帰った小惑星りゅうぐうの砂から、グルタミン酸などのアミノ酸が見つかった。アミノ酸は「生命の源」とされる有機物で、生命を形づくるタンパク質の材料になる。

 地球に落ちた隕石(いんせき)から検出された例はあるが、地上で付着した可能性も指摘されていた。地球外の試料から直接確認したのは初めてで、生命の起源は宇宙とする学説を補強する画期的な成果だ。生命誕生の謎を解明する研究に期待したい。

 りゅうぐうは地球や火星の軌道の近くを通る直径約900メートルの小惑星で、46億年前に太陽系ができたころの状態を保っているとされる。採取した計約5・4グラムの物質からは、水や有機物の存在を示唆するデータが得られている。今回、アミノ酸は23種類検出されたという。探査の意義の大きさを改めて実感する。

 アミノ酸は長くつながると筋肉などを作るタンパク質になる。地球での化学反応で生成されたとする学説と、宇宙から隕石でもたらされたとする学説とがある。専門家は「生命の起源に関する議論の基盤となり得る」としており、今後の分析結果は世界から注視されるに違いない。

 はやぶさ2は、初めて小惑星から試料を地球に持ち帰った探査機「はやぶさ」の後継機で、14年12月に種子島から打ち上げられた。18年6月にりゅうぐうに到着し、19年に2度着陸して人工クレーターを作ることにも成功した。20年12月に試料を入れたカプセルを地球へ投下した後、別の探査に向かっている。

 試料の分析は全国の研究機関が分担し、兵庫県佐用町にある大型放射光施設「スプリング8」も一部に活用された。アミノ酸の確認はJAXAと岡山大などのチームが行った。

 宇宙への進出では、米国主導の国際協力で月探査を進め、将来の火星探査につなげる「アルテミス計画」などが関心を集める。日本も計画に参加し、日本人宇宙飛行士の月面着陸も想定されている。月を周回する宇宙基地や月面の居住施設も予定され、人類の夢に近づく。

 一方で、中国が「宇宙強国」を目指して、今年中に独自の宇宙ステーションを完成させる。懸念されるのは、米中などの主導権争いが激しくなり、宇宙開発の軍事的な側面が強まっている点だ。日米両政府は安全保障の新領域である宇宙分野などでの協力強化を確認し、航空自衛隊には「宇宙作戦群」が発足した。

 言うまでもなく、宇宙は軍事目的ではなく平和利用する場でなければならない。各国が協力し、人類全体に寄与する科学の探究や資源の開発を進めていくべきだ。

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