社説

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 自民党が参院選の公約を発表した。出口の見えないウクライナ危機や厳しい東アジア情勢を背景に、これまで以上に防衛力強化や憲法改正を前面に打ち出している。

 自民党が単独過半数を占める衆院議員の任期は2025年秋まである。参院選でも勝利すれば、岸田文雄首相が政策を推し進める基盤はより強固になる。有権者がそれを是とするかどうかの選択だ。

 衆院解散がなければ、次の参院選までの3年間、国政選挙で民意を示す機会がない可能性もある。今回の公約の持つ意味は重い。他党の公約とも比較し、じっくり判断したい。

 公約は「日本を守る」「未来を創る」の2章から成り、全体のトップに「日本を守る」外交・安全保障を据えた。相手領域内のミサイル発射基地などを破壊する敵基地攻撃を言い換えた「反撃能力」の保有や、国内総生産(GDP)比2%以上を念頭に置いた防衛予算を「5年以内に達成」と明記している。

 保守層を意識したとみられるが、国是である平和主義を揺るがしかねない政策転換を含む内容だ。反撃能力は「専守防衛」の一線を越える懸念があり、歯止めなき防衛費増大は地域の緊張を高める恐れがある。

 首相は、先日のアジア安全保障会議で「核兵器のない世界」「自由で開かれたインド太平洋」を推進する「平和のための岸田ビジョン」を提唱した。軍備増強への懸念に応え、自身が目指す平和国家の在り方を丁寧に説明する必要がある。

 「国民生活を守る」ための物価高、災害、感染症への対策は2番手以降に並んだ。賃上げ企業への補助金拡充や中小企業の資金繰り支援など既存施策を羅列した印象だ。

 一方、「創る」の柱は、首相が看板に掲げる経済政策「新しい資本主義」である。「貯蓄から投資への流れを生みだし、資産所得倍増社会を実現」と記し、首相が強調してきた「分配」政策は後退した。新型コロナウイルス禍と物価高騰に苦しむ国民にどれだけ響くだろう。

 長年の懸案も「少子化対策を抜本的に強化」「地方への新しい人の流れを創出」といったスローガンにとどまり、全体として実現の仕組みや財源の裏付けは明確でない。

 国民負担の将来像を含め、課題解決の道筋を示して信を問うのが政権党の責任である。後出しでなく、選挙戦で具体策を語るべきだ。

 憲法は、必要な改正を行うことが「国民主権」のあるべき姿だとし、自衛隊明記、緊急事態対応など4項目を示して「早期に実現」と踏み込んだ。改憲ありきでなく、国民に幅広く自由な議論を促す環境が整っているかを見極めるのが先である。

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