社説

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 参院選がきょう公示される。

 ロシアのウクライナ侵攻や急激な円安に伴う物価高対策、外交・安全保障政策や憲法改正、新型コロナウイルス対応、社会保障、子育て・教育、気候変動、地方再生など争点は多岐にわたる。

 参院選は政権選択の選挙ではないが、時の政権への中間評価と位置づけられる。衆院解散がなければ、次の参院選までの3年間、国政選挙は遠のく可能性もある。改憲論議の行方など、日本の中長期的な針路を左右する重要な選択だ。

 各政党や候補者は、国と暮らしの未来に責任を持てる公約を掲げているか。財源はどのように手だてするのか。選択肢を明示して政策論争を尽くし、国民の率直な不安や疑問に真摯(しんし)に答えてもらいたい。

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 大きな論点の一つが、物価高対策だ。ウクライナ危機で燃油や原材料費などが高騰し、加速する円安が輸入価格を押し上げる。相次ぐ値上げが家計を直撃している。コロナ禍からの経済再生も道半ばである。

 共同通信社の直近の参院選トレンド調査では、物価高への岸田文雄首相の対応を「十分だと思わない」が79・6%と、「十分だと思う」の14・2%を大きく上回った。

 賃上げが物価上昇に追いつかず、低所得層や若年層ほど影響を受けやすい。首相は「政府の取り組みは効果が出ている」と強調するが、ウクライナ危機の長期化で物価高、円安ともに当面は続く。格差是正と適正な分配の実行は待ったなしだ。

 野党は「岸田インフレ」などと批判を強め、消費税減税などを掲げる。ただ与党と同様に具体的な財源が示されておらず、説得力に欠ける。

 国と地方の債務は計1200兆円を超えている。経済対策などの財源を赤字国債に頼ることが常態化したためだ。参院選後にも補正予算案が検討されている。人口減少や少子高齢化を直視すれば、受益と負担の議論は避けて通れない。財政健全化の道筋も示した上で政策を競い合うのが本来の姿だが、各党の公約では十分ではない。論戦で深めるべきだ。

問われる政権の体質

 一方で、歳出の抑制を形骸化しかねない事態が進む。「骨太の方針」では、国と地方の基礎的財政収支を2025年に黒字化する目標は維持されたが、自民党との調整で「ただし、重要な政策の選択肢を狭めることがあってはならない」と付加された。安倍晋三元首相ら保守派が国内総生産(GDP)の2%以上を求める防衛費が念頭にあるとされる。

 首相は日米首脳会談で防衛費の「相当な増額」を明言した。確かに、ロシアのウクライナ侵攻やミサイル発射を繰り返す北朝鮮情勢、中国の軍事的膨張など緊張の度は増している。ただ「数字ありき」で、財源に言及しないまま、有権者に判断を求めるのは無責任というほかない。

 経済政策でも首相は「新しい資本主義の実現」を掲げ、成長優先から分配政策に軸足を置くとしてきた。しかし実行計画では「分配重視」は変質し、アベノミクスとの違いが分からなくなった。ここでも安倍元首相らへの配慮が取りざたされる。

 こうした政権の体質も厳しく問われなければならない。

 国会軽視と論戦回避が際立った安倍、菅両政権に対し、首相は「民主主義の危機」との認識を示し、「信頼と共感を得られる政治」を掲げて路線の転換をうかがわせた。

 だが内実はどうか。民主主義の基盤を揺るがす公文書の改ざんが行われた森友学園問題や日本学術会議の任命拒否、「桜を見る会」を巡る疑惑などへの当事者による説明責任は果たされていない。国民の信頼回復に向け、首相が指導力を発揮したとは言い難い。

 「負の遺産」を一掃し、民主主義を修復できるのか。首相は選挙戦で改めて丁寧に語る必要がある。

野党は違いを明確に

 多様な意見を政治に反映するためには野党の責任も重い。だが国民の信頼や期待を集め切れていない。

 前回の選挙で全国32の改選1人区で候補を一本化した立憲民主、共産などの共闘は今回は限定的だ。独自色を示す好機のはずが、政権にすり寄る動きすらある。与党に代わる選択肢や目指す社会像を打ち出せなければ、存在感は薄れるばかりだ。

 近年の国政選挙は投票率の低迷が続いている。無関心は「白紙委任」につながり、身勝手な政治を許す。

 どの政党と候補者が説得力のある政策を掲げ、本気で取り組もうとしているのか、しっかりと見極めたい。有権者の判断力も試される。

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