社説

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 衆院選挙区画定審議会は、小選挙区定数の10増10減を柱とする区割り改定案を岸田文雄首相に勧告した。2・096倍だった「1票の格差」は1・999倍に縮小する。

 区割り変更は2017年に続く4度目となる。今回は人口比をより反映しやすいとされる「アダムズ方式」が初適用され、見直しの対象は過去最多の25都道府県、140選挙区に及んだ。全国の小選挙区の半分近くで区割りが変わる。

 最高裁は、格差が2倍を超えた09年、12年、14年の衆院選をいずれも「違憲状態」とみなし、国会に是正を求めた。司法の度重なる警告が見直しを後押しした格好だ。

 憲法が定める「法の下の平等」を追求し、1票の格差を是正する不断の取り組みは不可欠である。だが選挙のたびに見直しが繰り返され、戸惑う有権者も多い。政府と与野党は勧告に従い関連法の改正を急ぐとともに、有権者の混乱を招かないよう周知徹底に努めるべきだ。

 改定で、東京、神奈川など5都県で計10議席増え、滋賀、和歌山など10県で1議席ずつ減る。23あった格差2倍以上の選挙区はなくなり、複数の選挙区に分割される市区町は105から32に減る。

 兵庫県では、昨年の衆院選で有権者数が県内最多だった兵庫6区で全国最少の鳥取1区との格差が2倍を超えたため、川西市の一部が17年の改定に続いて兵庫5区に編入される。有権者の理解が深まるよう、丁寧な啓発に努めてもらいたい。

 安倍晋三元首相ら自民党有力者の地元でも定数が減る。党内には不満がくすぶるが、恣意(しい)的な線引きと疑われないよう客観性を重視した画定審の結論を尊重すべきだ。そもそも改定案は、自民などが主導した法改正に基づく。自ら覆そうとすれば政治への信頼を失うだけである。

 ただ、これだけの見直しが実現しても格差は2倍を辛うじて下回るにすぎない。都市部への人口偏在が続く限り、再び見直しが必要となる。人口が減る地方の有権者が「国政に声が届きにくくなる」と不安を抱くのは当然だろう。投票価値の平等と地方の声の反映を両立するには、一時しのぎの対応では限界がある。

 導入から四半世紀が経過した小選挙区比例代表並立制は、選挙区で惜敗した候補への票が議席につながらない半面、小選挙区の得票が他候補より少なくても比例代表で復活当選する事例がある。

 制度の問題点を直視し、民意をより正確に反映する抜本的な選挙制度改革の議論に踏み込む時ではないか。参院に地方の声や少数意見を反映する仕組みを取り入れるなど、二院制の特性を生かす視点も必要だ。

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