社説

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 核兵器を非人道兵器として史上初めて違法化した核兵器禁止条約の第1回締約国会議がオーストリアのウィーンで開かれ、「核なき世界」の実現へ即時行動を呼びかける宣言と行動計画を採択した。

 残念なのは、その歴史的な場に、被爆国である日本の政府代表団の姿がなかったことである。不参加の判断自体が誤りだったと言える。

 同じ米国の「核の傘」の下にいる北大西洋条約機構(NATO)加盟国ではドイツなど4カ国がオブザーバー参加した。ウクライナ侵攻によるロシアの脅威に直面し、NATO加盟を申請したフィンランドなどもオブザーバーとして出席した。

 中国をにらんだ米国主導の枠組み「クアッド」に日本と共に参加するオーストラリアも同じ立場で名を連ねる。米国高官は各国の独自判断を黙認する発言をしており、非締結国側の姿勢も対話重視に変わってきたのが現状だろう。

 その中で参加を見送った日本の対応には「驚くべきことだ」と落胆の声が広がった。核の非人道性を訴えた被爆者や被爆地・広島、長崎市の関係者も無念だったに違いない。

 日本政府は核保有国と非保有国の「橋渡し役」を自任する。だが「その資格はない」との批判もある。岸田文雄首相は内外の厳しい指摘にしっかり耳を傾けるべきだ。

 核禁止条約には日本だけでなく、米国やロシア、中国などの核保有国も参加していない。「米国との信頼関係の下、現実的な取り組みを進める」と岸田首相は述べている。

 しかし、米国の同盟国でNATO加盟国のドイツ代表が「核なき世界の実現という目標を完全に共有している」と発言し、「橋渡し役」の期待は他の国々に移りつつある。日本の信頼回復のためにも、核廃絶の議論には深く関与せねばならない。

 8月には、核保有国が参加する核拡散防止条約(NPT)の5年に1度の再検討会議が米ニューヨークで開かれ、岸田首相は歴代首相として初めて出席する。来年の先進7カ国首脳会議(G7サミット)の広島開催が決定し、地元選出の首相として核軍縮への決意を示したい意向だ。引き続き同年11月にニューヨークの国連本部で開催される核禁止条約の第2回会議にも、ぜひ参加してもらいたい。

 今回の参院選では、米国との「核共有」の議論を促す主張が聞かれるが、「核共有」はそもそも核の保有や使用などを一切認めない核禁止条約の理念と相いれない。

 与党の自民党は公約で「核軍縮・不拡散体制の強化」を掲げている。それなら核禁止条約に後ろ向きの姿勢を根本から改めるべきである。

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