社説

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 物価高に対する国民の不満と不安は高まるばかりである。その根底には、格差是正に向けた「本気度」が見えてこない政治への怒りがあるのではないか。

 時計の針を少し戻そう。2021年10月8日、岸田文雄首相は就任後初の所信表明演説で「新自由主義的な政策は、富める者と富まざる者との深刻な分断を生んだ」と述べた。特に力を込めたのが次のくだりである。「分配なくして成長なし」「今こそ新しい資本主義を起動し、模索していこうではありませんか」

 成長と効率優先の新自由主義的な経済政策アベノミクスは、格差の拡大を招いた。雇用は増えたが、非正規が多く、コロナ禍で真っ先に解雇されるなど深刻な打撃を受けた。こうした政策を転換し、格差是正に取り組むとの首相の決意表明に、国民の期待は小さくなかっただろう。

 しかし、分配を重視する姿勢は後退した。今や、アベノミクスへの先祖返りが鮮明だ。

 参院選の公示前に閣議決定された「新しい資本主義」の実行計画は、「徹底して成長を追求する」とうたう。人、科学技術、新興企業、脱炭素の4分野に重点投資し、経済を立て直すとしている。大胆な金融政策、機動的な財政政策、成長戦略というアベノミクスの「三本の矢の枠組みを堅持」との文言も入った。

 格差をさらに広げかねない政策も盛り込まれた。「個人の金融資産を貯蓄から投資にシフトさせる」とし、株式投資などから得る所得を増やす「資産所得倍増プラン」を年末に策定するという。

 大規模な金融緩和が急激な円安を誘発し、物価対策が喫緊の課題となっている今こそ、アベノミクスの弊害を直視する必要がある。競争力の強化はもちろん重要だが、暮らしの安心なくしてはコロナ禍からの経済再生は望めない。

 とはいえ、財源を曖昧にしたばらまきは避けねばならない。参院選では、本当に困っている人たちの不安を解消し、格差是正につながる分配策を聞かせてほしい。

 自民党は新しい資本主義の推進を公約に据えた。人や成長分野への投資で経済を成長させ、所得拡大につなげるとの主張は公明党も同じだ。一方、立憲民主、共産、社民の各党は、富裕層の所得税率アップを掲げた。日本維新の会と国民民主党は、必要最低限の金額を給付する「ベーシックインカム」の導入を挙げた。NHK党を含む全野党は、消費税の減税か廃止を訴える。

 岸田首相は、公示日の第一声で新しい資本主義に触れなかった。看板政策を丁寧に説明し、野党と議論を戦わせるべきだ。

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